本書では、寄生虫、熱帯医学、感染免疫学の専門家である著者が、感染症を生み出してきた具体例をひとつひとつ紹介し、世界各地で起こる謎の感染症の実体を明らかにしていく。なぜ、これらの感染症が誕生したのか、その社会背景にまで触れているのが特徴である。
1967年から2000年の間だけでも、30種類以上の新しい病原体が出現しているというデータがある。 世界で最も恐れられている感染症であるエボラ出血熱や、マールブルグ熱は、人間が自然環境を破壊した結果、生まれてきたものである。森林内動物だけで形成されていた微細物の感染サイクルが、開発によって行き場を失った動物たちと共に人間社会に入ってきたからだ。著者は、これらの感染症の根本原因は、人類の「快適性」や「利便性」の追求にあるとしている。文明の発達には、人間の生きる力を弱め、新たな感染症を発生させる機会をもたらしている側面がある、ということを、研究者をはじめ、現代人は十分認識しておかなければならない。
いつ、突如として新しい微生物が出現し、人類をクライシスに導くか、それは誰にもわからない。だが、いつ起こっても不思議でない状況が世界各地でみられるのである。著者は、「これは微生物たちの逆襲である」と本書を通じて、われわれに警告を発している。(冴木なお)
感染症といえば、エイズ、O157、C型肝炎などが一般的である。しかし昨今、結核、コレラ、マラリアなど、過去に制圧されたはずの病原体が再び猛威をふるっているのだ。
なぜ近代医学は感染症を撲滅できないのだろうか。著者は、「昨今の感染症暴発は、快適性、利便性のみを追求した人間中心主義が原因」「超清潔志向の日本人は最も抵抗力がない」と指摘する。さらに流行を拡大する世界の風土病についても紹介。全身衰弱で死亡するアフリカ睡眠病、陰嚢と下肢に腫瘍ができるバンクロフトフィラリア症などが写真入りで説明されており、専門家にも貴重な資料となるであろう。
忍び寄る危機への優れた分析と警告の書。
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