大多数の日本人(著者らは全体の9割と述べている)は意外にわからないことを「わかったつもり」で生活している。そして、高名な人物が「白」と言えば「白」であるし、「黒」と言えば「黒」である、というような風潮も見られる。そんな大多数の「何も考えていない」人に、もっと物事を自分の「方法論」で考えてみよう、と呼びかけている。教育、政治、環境問題、医学などにまつわるさまざまな問題が、彼らの「方法論」によってバッサリ切られていく。手厳しい意見も多いが、ハッとさせられるのも事実である。
そしてさらに特筆すべきは、物事を表現する言葉がとにかく豊富なことである。1つの事象を説明するのに、次から次へと言葉が飛び出してくる。養老・甲野の真骨頂ともいえるだろう。(冴木なお)
例えば、甲野氏は「法律や規制よりも『自分の美意識』が大切だ」と語る。個人の「美意識」をもっとも尊重しなければならないものと位置付ける。それに対して養老氏は「『安全第一』と考えることがこの国のマザコン体質です」と語る。両者ともに、『安全』が行動原則となっている現代日本に疑問を投げかけているのだ。
本書はそれぞれ“身体のしくみ”の専門家と“身体の動き”の専門家が、それぞれの視点で歴史、医療、教育、ことば、格闘技など多彩なテーマで語り合う。解剖学者の“メス”と古武術家の“刀”が火花を散らせる異種格闘対論である。
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