1400人の住民は、不法投棄した産業廃棄物処理業者、また業者の指導・監督を怠った香川県らの責任を追及しようと立ち上がる。そして不法投棄から25年を経た昨年6月、公害調停が成立。すべての廃棄物を島外に撤去することを県に認めさせるに至った。
本書は豊島住民弁護団副団長だった著者が、住民がいかに権力に挑み、勝利したかを克明に記した記録である。
行政の無策が招いた不法投棄住民が一丸となって県を追及
何より本書を読んで恐ろしく感じるのは、行政の無策がこうした悪徳業者をのさばらせ、環境破壊を招いてしまうという事実だ。
「無害物によるミミズの養殖」として許可を得た業者は、間もなく有害産業廃棄物を搬入し始める。だが、県は「シュレッダーダストや金属くずは金属回収のための原材料。廃棄物処理法による許可は不要」との解釈で、事態を放置した。兵庫県警による強制捜査をきっかけに不法投棄が止まった後も、県は残った廃棄物の撤去を拒み続けた。県自ら、違法行為や環境破壊に手を貸したと言われても仕方のない無責任さで、憤りを禁じ得ない。
弁護団・住民は県に責任を認めさせるため、あらゆる手段を尽くす。県庁前での抗議行動、東京・銀座でのゴミパレード、県内100カ所での座談会など高齢者の多い豊島住民にとっては負担の多い運動も少なくない。だが、強い郷土愛、次世代への責任感を抱く住民らは、だれもがいとわず運動を続け、ついに勝利をつかむ。その過程に素直に胸を打たれる。
豊島事件は不法投棄が環境に致命的な影響を及ぼすこと、その回復に多大な社会的費用がかかること、解決には住民一丸となった戦いが必要なことなどを世間に知らしめた。同時に廃棄物行政が負う社会的責任の重さも指摘した。本書は、こうした豊島事件の本質を明確に示すものである。家電リサイクル法の施行で改めて不法投棄が注目されている現在、過去最大・最悪の不法投棄事件を概観できる本書は、意義ある一冊となるだろう。
(経済ジャーナリスト 小林佳代)
(日経エコロジー 2001/09/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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