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強い責任感で周囲を引っ張るリーダーとその組織が、それゆえに挫折し、衰退していくという本書が挙げる事例は、なんとも痛々しい。たとえば、雑誌の業績を好転させる名人で華々しいキャリアを持つリーダーの、部下の責任を引き受けていった末の業績悪化と失脚、IDA(国際開発機関)に勤めるエリートの、開発途上国担当者に対する熱心なアプローチが生む相互不信と挫折、自信と能力にあふれた弁護士の、事務所の浮沈を背負い込むあまりの組織不和と変革の失敗…。
この完全無欠のようなリーダーの下で、なぜ部下は無責任になり、不信や誤解が生じ、組織は機能不全に陥り、協働は失われ、プロジェクトは挫折するのかという疑問を、「無責任ウィルス」をキーワードにした斬新なアプローチで説き明かすのが本書だ。
ベースになる概念は2つ。1つは、組織でコントロールを維持しつづけたいといった「支配価値」の心理で、もう1つは、一方が責任を過剰にとれば他方がその分、過少にとるという「責任量保存の法則」である。本書は、この「支配価値」が失われる過程と責任量の偏り具合から、組織に無責任ウィルスが蔓延する原因を見事に説明している。
では、処方箋はあるのか。本書は「選択決定プロセス」「枠組み実験」「責任のハシゴ」「リーダーシップとフォロワーシップの再定義」という4つのツールを示している。これは人間関係や組織がはらむマイナスの力学を修復し、逆に生産的な方向へと向かわせるステップで、従来のリーダーシップ論や組織論から見ても画期的なツールと言える。異質な他者と有益な協働関係を築くことが、ビジネスに限らず求められている。その不可欠な原則を本書は教えている。(棚上 勉)
出版社/著者からの内容紹介
責任感の強いリーダーが必死で働けば働くほど、業績が悪化し、部下がやる気を失うのはなぜか? 組織に深刻な悪影響をもたらす「無責任」という病理がどのように発生し、職場で感染していくかを実例を交えて解き明かし、欧米で絶賛された最新リーダーシップ論。