何ともお寒い話だが、しかしこれは日本のミュージアムが置かれている状況を如実に示すエピソードと言えるだろう。バブル期に各地であれだけ乱造されたミュージアムが、今となっては散財の象徴として目の敵にされている。社会も政府もただ目先の採算を気にかけるばかりで、優れた文化資本のコレクションや膨大な情報が蓄積されたミュージアムを成熟社会の充実に役立てようという本来の認識などどこかに置き去りにされてしまっている。これでは、高い工費を注ぎ込んで建設されたミュージアムも浮かばれまい。
こうした意識の低さを改革するためにも本格的なミュージアム・マネジメントの紹介・導入が期待されるところだが、その点独自の切り口で書かれた本書は多くの示唆に富んでいるといえよう。マネジメントといっても、本書の場合はもちろん採算や効率の話に終始するようなことはなく、ミュージアムを都市や経営との関連で位置付け、行政改革、住民参画、サービス産業の充実などさまざまな切り口からその重要性をとらえていくことを基本姿勢としている。2人の著者はそれぞれ行政評価と文化政策の専門家で、各々の立場やミュージアム観は微妙に異なっているのだが、その相違がまた本書の議論の奥行きを深め、そこで提案されている解決策の説得力を増す効果をもっている。
あとがきによると、現在のミュージアムをめぐる諸問題は「文化vs経済」「ローカルvsグローバル」「政府vs民間」という3つの対立軸を中心に形成されているという。これは図らずもミュージアムが現代社会の縮図であることを物語っている。単に「ハコモノ」を糾弾するだけの議論では、もはや何も論じたことにはならないのである。(暮沢剛巳)
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