ブックレビュー社
「自己組織化」という基本原理によって生物進化を説明。さらに技術の進化,社会体制までにも当てはめる キリンの首はなぜ長いのか――「突然変異」と「自然淘汰」により進化したからだ,というダーウィンの進化論は,あまりにも有名だ。しかし,自然淘汰だけで生物界の詳細な構造は説明できないことを著者は指摘する。そして,生物における秩序の多くは自然淘汰の結果などではなく,自己組織化された自発的秩序だと述べている。分子から細胞が組織され,細胞は恒常性を保ち生物を形作り,そして生物が集まり組織化されることで生態系が生まれている。確かに,著者が指摘するように,すべての生物が偶然の産物と考えるよりは,調節的なネットワークによる自己組織化がもたらす秩序であると考える方が説得力がある。
著者は,この自己組織化の基本原理により,進化のビックバンや生命の必然性も説明している。さらには,生物の進化や生命体の営みのみならず,さまざまな技術が競い合うことで技術が進化すること,また社会のルールとしての民主主義体制の合理的説明さえも自己組織化の理論で裏づけることができると述べている。これらの仕組みは,複雑系の法則として発見されつつあるのだという。
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メタローグ
複雑系の入門書としてはすばらしいできだ。進化の原動力は自然淘汰だけではなく自己組織化が重要だという主張は、しかし、現在の進化論の理解と矛盾しないとぼくは思うのだが……。自己組織化は生物の進化だけでなく、経済現象から政治・社会・文明史まで適用可能というカウフマンの主張も、説得力がある。それにしても、カウフマン独特の「これでもか~、これでもか~」という解説はくどい。論敵J・メイナード・スミスとはもっと仲が悪いのかと思ったら、お友だち同士なのね。そういう間柄だからあれだけ激烈な論争ができるのか。それとも、そういう間柄でも論争する、彼らの科学者魂をほめるべきか。(佐倉統/東京大学大学院助教授)
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