約200ページの薄い本で、金川社長の経営に対する考え方が淡々と語られているが、その考え方はユニークである。奇をてらったようなものは一切ないが、このように長期にわたって利益を出し続けるための堅実な経営哲学を実践している経営者は、世界広しと言えど、そう多くはないだろう。
「株式会社の経営者にとって、ボスは株主だけ」「『従業員は使用人だ』と、経営者は堂々と言わなければいけない」といった欧米風の考え方が登場したかと思えば、「キャッシュはむやみに投資しない」「熱狂の中でも冷静に判断し、先のことに対して常に備える」などと、極めて慎重な姿勢をのぞかせる。また、「オールドエコノミーを切り捨てない」といったユニークな主張も読ませてくれる。いずれの考え方も、合理的で非常に説得力があり、この不況下になぜ信越化学工業が一人勝ちしているのか、その理由がわかるような気がする。
「贅沢をしたくて仕事をしているわけではなく、会社をよくすることそのものが生きがい」と語る金川社長は、まさにジェームズ・C・コリンズ著『ビジョナリーカンパニー 2』で示された「第5水準の経営者」である。本書は、事業への情熱をどう経営で表現するか、その実践方法を示した1冊と言えるかもしれない。(土井英司)
「体を張らねば改革はできない」が持論である金川千尋社長が、改革を振り返りながら、独自の経営哲学を明らかにする。
例えば、一時期六〇〇人採用していた新卒者を二〇人程度に抑えたエピソードを披露。以前は各部門から必要とされる人員を言われるままに補充してきたが、各部門を人件費を含めた営業利益で評価する考えを徹底させ、大幅なコストダウンを図ったという。
徹底した合理主義者として知られる金川氏。だが、「オールドエコノミーを切り捨てない」「キャッシュはむやみに投資しない」といった欧米的な合理主義とは一味違う主張は考えさせられる。
(弁護士 木村晋介)
(日経ベンチャー 2003/02/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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