竹中平蔵経済財政・金融担当大臣の言っていることが合っているか、間違っているかを議論するより、よっぽど「銀行」というものの本質が見えてくる。
著者は元ソロモン・ブラザーズ・アジア証券のトレーダーだが、新生「ソニー銀行」のサービス内容に絡めながら、非常に平易な言葉で、個人の側から、あるべき銀行サービスの姿を明らかにしている。コマーシャルバンクとマーチャントバンク、プライベートバンクの違いがいま一つ定かでない読者にとっても最良の入門書になるだろう。
「銀行が企業に対する債権者であるように、預金者は銀行に対する債権者である。砕いて言えば、預金者は銀行にカネを貸している」「例えば、銀行や郵便局は大量の国債を保有していて、国は国債で集めたカネで公共事業を行う。つまり、銀行や郵便局にカネを預けることは、間接的に公共事業に資金を提供することになるが、多くの個人はその事実を認識していない」
随所に著者の「新しい日本人のための幸福論」が顔をのぞかせる中で、ソニー銀行はこんなこともやっているのかという発見もある。住宅ローンの話だ。通常、銀行に住宅ローンを申し込むと保証料と団体信用生命保険料が上乗せされる。
例えば、事業の失敗やリストラで私の月々の返済が滞れば銀行は保証会社からお金が取れる。また、死んだ場合の生命保険も、その使途は自由にならず、銀行が総取りしておしまい。つまり、銀行はノーリスクで手数料だけ稼いでいることになる。
一方ソニー銀行では、ネット上ですべての手続きが行われるから来店が不要で繰り上げ返済も自由なことに加えて、この保証料と保険料が不要なのだという。
こうした現実を分かってしまった人が、自分の「銀行預金」に対する態度を改め、お金の管理について再考しようとする時、『マネースマート』(桝山寛著、角川書店)を併せて読んでみることをお勧めする。
「給料を節約していくら貯金を増やしても人生は開けてこない。リスクを取って投資する側に回らなければいつまでたってもラットレースから抜けられないのだ」と喝破した、あのベストセラー『金持ち父さん貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター著、筑摩書房)のエッセンスを子供でも分かるように描き出しているからである。
それにしても、ソニーというのは不思議な会社だ。
(東京都杉並区教育委員会参与 藤原 和博)
(日経ビジネス 2003/02/10 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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