出版社 / 著者からの内容紹介
「クリエイティブ・クラス」とは、いったい何なんでしょうか。
提唱者のリチャード・フロリダは、クリエイティブ・クラスが流動化している状況を調査するのに職業分類を用いました。これに疑問なく従えば、いわゆるプロフェッショナルに定義される知的労働者を指すことになります。
ところが、この分類には当てはまらない、たとえばトヨタの工場労働者、伝説的なホテルマン、さらには本稿でも紹介されているSASインスティテュートやグーグルなどの社員についても、そうであると言っています。
『ハイコンセプト』の著者、ダニエル・ピンク――彼もクリエイティブ経済の賛同者の一人ですが――いわく「フロリダの定義はかなり広い」。
では、ピンクの考えるところでクリエイティブ・クラスを定義すると、「左脳思考だけでなく、右脳思考もできる人」であり、「何らかの専門性を持ちながらも、そこに埋没することなく全体観を俯瞰でき」、かつ「論理的でありながらも、美しさや遊びといった、論理では説明し切れない世界を理解できる人」ということになりましょうか。
しかし、定義はあまり重要ではありません。ナレッジ・ワーカー(知識労働者)のそれはそもそもあいまいで、ホワイトカラー全般プラス一部のブルーカラーといった認識に落ち着いているのではないでしょうか。ナレッジ・ワーカーの台頭にまつわる主張は、むしろ、天然資源、工場、労働者数などが物を言う工業の時代から、知識や情報、ビジネスモデル、労働者の質が競争を左右する知識の時代へ移行しているという、パラダイム・シフトの指摘でした。
クリエイティブ・クラスという概念は、パラダイム・シフトではなく、ナレッジ・ワーカーの「再解釈」を訴えています。21世紀における付加価値、すなわち「イノベーション」を創造できる、あるいはリードできるナレッジ・ワーカーといえるでしょう。
その背景には、さまざまな分野において標準化が進み、定型的な知識が広く共有されるようになった現在、ドロシー・レオナルドが唱えた「ディープ・スマート」、野中郁次郎らの「豊かな暗黙知」など、属人的な知の重要性が認識されていることがあります。
くわえて、イノベーション――けっして一発屋的ではなく――を継続的に実現するには、このように標準化や共有化が難しい知をふんだんに持ち合わせていることが有利であり、もちろんただ持っているだけでは無意味ですから、これを組織的に活用できる能力が不可欠です。
よって日本でも、必然的にダイバーシティ・マネジメントが重要性を帯びてきます。とりわけ、暗黙知の宝庫である「団塊世代」、ビジネスパーソンとしての知識や能力、組織へのロイヤルティも高く、不文律もわきまえている「ワーキング・マザー」の再活用が不可欠です。また、若者が将来の希望を失うことなく、組織に貢献し、学習を重ねていくためにも、ミドル層の働き方や処遇を変えていく必要もあるでしょう。
しかも、日本はこの2007年、65歳以上の高齢者が21%以上を占める「超高齢社会」に世界で最初に突入します。そして、2055年には総人口は1億人を切り、平均寿命が女性は90歳、男性は83歳を超え、高齢者比率も40%を超えるそうです。このように、労働力人口も生産人口も減少していくという未来においては、高齢者や女性の活用は時代の要請であり、またイノベーションの源泉となるはずです。
クリエイティブ・クラスを「創造的な人たち」と直訳してしまうと、その本質や背後にある時代の変化を見失いかねません。しかし、このようにデジタル思考してしまう人はそもそもクリエイティブ・クラスではないのかもしれませんが――。
内容(「BOOK」データベースより)
アメリカの都市経済学者リチャード・フロリダによれば、世界経済は「クリエイティブ・クラス」と呼ばれる新しい価値観を共有する人材がリードする、クリエイティブ経済の段階に入ったという。本書は、この産業革命以来の大変化に適応するために、それぞれの国、都市、企業そして人材に必要な変革の条件を明らかにする。