近代を規定してきた成長概念を問い直し、持続可能な地球社会への提言を続けてきた著者にとって、本書はその仕事の集大成的な意味を持っている。とりわけ興味深いのは、「すでに始まっている未来」として、現在繁栄の頂点にある米国経済を分析している部分だ。そこでは、バブル的に膨張したニューエコノミー企業の経営手法にほころびが見えてきた一方で、コミュニティーと最終消費者にしっかりと根を張った新しい企業が勃興してきているという。この点は、日本経済の今後の方向性を考えるうえでも、示唆を与えてくれる。
最終章では、新たな日本社会の発展モデルのカギとなる、食料、エネルギー、ケアの自給に関し、すでに地域で起きている変化の胎動も紹介されている。まず小さなシステムを手づくりで構築し、やがて社会構造全体を転換していこうという著者の戦略は、一見遠回りのようで、実は着実だ。本書は、幅広い市民層に未来への具体的展望を与えると同時に、企業人、起業をめざす人にとっても参考になるヒントが多数詰まっている。(松田尚之)
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