人生に行き詰まってしまったふたりの主人公に共通するのは、生きる意味ばかりを性急に追い求めてきたという点だ。その先にあるのは、「死ぬしかないような切羽つまった理由でもなければ、人は生きつづけるしかない」「所詮、生きるとはそんなものだろう」(「草にすわる」)というような諦念と無力感でしかない。生きることそのものを祝福することで生きる力を取り戻していく彼らの姿には、同じような袋小路にはまりこんでしまった人に向けた強烈なメッセージが込められている。
伝えたいことを前面に押し出す著者のスタイルをよしとするかどうかで、本書の評価は分かれる。だがそのどちらにせよ、過剰なほど理知的な文体を用いて、現代人の寄る辺なさを見事に浮き彫りにするうまさを認めないわけにはいかない。厳しい現実の中で生きる道をまっすぐに指し示す、冷たくて温かい不思議な味わいのある作品集だ。(小尾慶一)
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