2章「建築を旅する─鉄について」、3章「ル・コルビュジエを旅する」、4章「ミースを旅する」、5章「カーンを旅する」、6章「インターナショナル・スタイル以降」…と続く章立てからもわかるように近代建築の巨匠たちにスポットをあて、その代表作をいくつかとりあげながら建築家像を浮き彫りにしている。この本が他の近代建築史解説書と決定的に異なる点は、著者である建築家・岸和郎の視点が常にベースにあることだ。著者がこれらの巨匠の作品に若いころ、いかに刺激を受けたか、そして今の作品に影響を与えているか、そうした思いが語られる。そこには歴史家ではなく、作品を作り続けている建築家だからこその建築の見方、とらえ方があり、それが平易な言葉でつづられている。一方で岸和郎の作風と同様、理路整然とした筋立てがあるので、建築史を学ぶ教科書ともなりうる。
本文のなかで繰り返し著者が強調することは、「建築を実際にまず体験すること」である。そこから「できるなら建築に感動すること、そのことを一度体験してほしい」「ある日、建築に感動するというのが来た瞬間に、すべてがわかったような気がする。そこからがスタートだと思うのです」と続く。
難点を挙げるなら、とりあげる作品の数が多い分、読後に「広く浅く」という印象が残ったことだろうか。それを補完する意味で各章末にある註(ノート)では、文体も含め本文とは切り離された印象で途端に「専門用語」が羅列される。そのあたりもうまくかみ砕かれていれば、より親切な手引となったのではないだろうか。
この本は著者が教鞭をとる大学での講義録に加筆修正したものとある。大学での近代建築史の講義はひどく眠気を誘うものだと感じる学生も少なくないだろう。そんな建築学科の学生や、建築に興味を持ち始めコルビュジエやミースについて知ってみたいと思う人におすすめの1冊だ。(中山ケンタ)
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