内容紹介
生物が餌場を争ってできる縄張り,コンビニが顧客を囲い込んでできる商圏,結晶が核から成長してできる単結晶領域,河川が雨水を受け持つ流域,救急病院や公立図書館などの公共施設がサービスを受け持つ地区など,いくつかの個体が勢力を競い合ったり分担し合ったりして空間を分け合う姿は,身の回りのいたるところで観察できる。この姿を,「なわばり」を表す空間分割図形として捉えることによって,自然界や人間社会における多くの現象が統一的視点から解析できるとともに,さまざまなものづくりに役立つことを紹介する。
これは,数学を道具に用いて現実の諸問題を解決する方法論の確立を目指す「数理工学」という学問の一例でもある。数理工学では,現実世界の複雑な現象からその中心部分を取り出して単純化し,数学の言葉で記述して,数学という道具が使える舞台に乗せる。この作業は,現象の数理モデリングとよばれる。これによって,多様な現象に潜む共通の構造を浮き彫りにでき,それらを統一的に眺めることのできる汎用的な手法を手に入れることができる。本書は,「なわばり」というものの見方を手がかりとして,身の回りの現象を抽象化する数理モデリングのおもしろさと有用性を,わかりやすく解説した。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
杉原 厚吉
1948年岐阜県生まれ。1973年東京大学大学院工学系研究科計数工学専門課程修士課程修了。現在、東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻教授。工学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)