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妊娠カレンダー (文春文庫) (文庫)

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出版社/著者からの内容紹介

姉が妊娠した……やがて妹はめまいのするような悪意の中へすべりこんで行く。現実のゆらぎをきらめく言葉で定着した芥川賞受賞作


内容(「BOOK」データベースより)

出産を控えた姉に毒薬の染まったジャムを食べさせる妹…。妊娠をきっかけとした心理と生理のゆらぎを描く芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」。謎に包まれた寂しい学生寮の物語「ジミトリイ」、小学校の給食室に魅せられた男の告白「夕暮れの給食室と雨のプール」。透きとおった悪夢のようにあざやかな三篇の小説。

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28 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 一面, 2005/5/11
妊婦というものはおなかで赤ちゃんをはぐくむ間に勝手に母性本能が発揮されるものと思っていた。自分が妊娠するまでは。
「妊娠カレンダー」は友人が貸してくれた本だが、内容を知らなかった私はこれもまた妊婦の暖かい気持ちとか赤ちゃんを心待ちにする様子が描かれているのだろうと思い込みなかなか読む気になれなかった。
ここにあるのは妊婦雑誌に出てくる前向きな女性とは正反対の女性「姉」である。普段匂わないようなものにさえ疎ましい悪臭を感じるつわり。体は思うように動かず鬱かと思うほどちょっとしたことに落ち込みイラつき、それが過ぎればまた馬鹿らしいほどの食欲。
まわりの気遣いをものともしない上、素直に感謝する余裕もない。自分でもどうしたいのかわからない。おなかは見る間に膨れ、いまさらなにをどうしたって生むことの痛みと母親になることから逃れられない怖さ。
このなかで「妹」が淡々とつくるジャムには姉を変えてしまう妊娠への無意識の抵抗に思える。
もしかしたら妊婦にも二種類のタイプがあるのかもしれない。
人事ではない、自分のおなかに生命が宿ったとき、この姉に共感する人は私だけではないと思う。自分の姉に赤ちゃんができたときは、楽しみで可愛くて幸せな気持ちにしてくれるまさに天使のような存在だった。特に子供好きなわけではなかった私でもそうなのだ。我が子ならきっと手放しで嬉しいものだと思っていた。それが我が子であるだけでどうしてこんなにおそろしいのだろう。作品には産まれてからの姉と赤ちゃんの様子は書かれていない。私のような人間には妊婦にはこんな一面もあるのだと認めたもらった気がする作品だった。
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11 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 大好きだから不安になる。, 2006/1/20
By めやに。 (東京都江東区) - レビューをすべて見る
 オレンジの色は、濃いから良い。グレープフルーツの色は、どうも色が薄すぎて透明で、はかない。しかも、それがジャムになってとろとろにとけて蜜と化せば、くずれそうで、こわれそうで、色が今にも空気にとろけていきそう、と思う。
 自分の大好きな、きれいで、はかなげで、ほんぽうでわがままな人が、結婚して妊娠していく様は、どんなだろう。人間らしくないような人が「人間」に「動物」に成り下がる様子はどんなろう。しかも、そのことで大好きなその人の容姿がくずれだしたりしたら、いっそのこと殺したい、と思うんだろうか。主人公が赤ん坊を一人の人間として考えず、ゲノムとして考えた理由は、姉から「人間」が生まれることに実感がもてなかったからじゃないだろうか。また、グレープフルーツのジャムで赤ん坊を壊したいと思ったのは、姉と義兄、自分という3人だけだった生活のなかで、姉と義兄だけの生産物ができることに恐れたからじゃないだろうか。もし、ジャムの毒でもって子供が破壊されていた場合、子供は三人の生産物となり、また生活は続く。妊娠した姉の心境よりも、妹の心のうつろいの描写がすごい小説だと思った。とても、おもしろい。
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5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0 心の奥底にあるのは、なんであれかすかに歪んでいる, 2006/11/2
短編を3編収録。

それぞれに共通するのは、白黒の無声映画のような静かな雰囲気。
木造の個人病院。さびれた学生寮。雨の小学校。

すべてが淡々とひっそりしているのは、「個人的」な話だからだと思う。誰の心の中にもある、正体のわからない奇妙な感情。どんなに親しい人にだって、話すことはない、漠然としたまとまりのないもの。「個人的」なゆえ、うっすらと狂気を帯びているようなもの。

それを、言葉に(小説に)変換したとき、個人的だったものは普遍性を持ち、共感を誘い、感興を呼ぶのだろう。

そういう風に深読みしなかったら、またはそんな心のわだかまりを意識しない人には、きっと「なんか暗い、ヘンな話」かもしれない。
(私はどっちかっつーと、そっちです。だから星三つ)
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