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蝉しぐれ (文春文庫) (文庫)

藤沢 周平 (著)
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出版社/著者からの内容紹介

清流と木立にかこまれた城下組屋敷。淡い恋、友情、そして忍苦。苛烈な運命に翻弄されつつ成長してゆく少年藩士をえがく傑作長篇


内容(「BOOK」データベースより)

清流とゆたかな木立にかこまれた城下組屋敷。普請組跡とり牧文四郎は剣の修業に余念ない。淡い恋、友情、そして非運と忍苦。苛烈な運命に翻弄されつつ成長してゆく少年藩士の姿を、精気溢れる文章で描きだす待望久しい長篇傑作! --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。

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5つ星のうち 5.0 作家の力量, 2008/6/30
風景描写が素晴らしい。精緻な文章とはこうゆう文章を言うのだと思えた。
純粋な文章の表現力に驚くことは少いが、GWに実家で父親の本棚にあったこの作品に驚いた。ファンが多いのは知っていたが、藤沢周平が優れた作家であると遅ればせながら知った。
主人公は江戸時代、北国のとある藩の下級武士の子である。当時の武士の子弟は儒学や剣術に励み、将来の官吏としての修行に励む。幼少から主人公は剣に抜群の才能をみせる。
藩の権力争いによる父親の横死などの困難に耐えながらも友情や剣術に励む姿が描かれる。その話の展開は無駄が無く、無理が無い。
奇抜な展開で構成された小説と対極に位置するような、丁寧な描写と無理の無い展開による構成は同時に強い説得力とリアリティを持つ。
主人公は平凡な半生を送るのではない。しかし、抜群の剣の腕前を持ちながらも、やはり主人公は普通の人間であり、藩という組織の内部抗争に翻弄される下級武士である。剣は主人公を助けるが、主人公を超人にはしない。

主人公は良い結末を迎えるが、読後に残るのはやはり切なさである。不幸な結末となった人々や藩という組織の非常さ、抗いようもない下級武士の悲哀、過ぎ行く少年期、それらに対する緻密な描写が主人公の活躍があっても心躍る物語ではなく、切ない物語にしている。
印象的な場面が多々ある。
冒頭の自然描写。
物静かな父が大声を上げて進言し、その確固たる良心に日頃の尊敬の念を深めた場面。
主人公が死罪となった父に思いを伝えられなかったことを悔やむ場面。
刑死した父の遺体を荷車に載せて牽く主人公の描写。
先輩の官吏に従って野山に分け入って農村を巡り、稲の作柄を相談する場面。
上げればきりがないが、精緻な文章がそれぞれの名場面を表現しており、それらが無理のない展開で連なっている。
それぞれの名場面の描写はおそらく、作者が相当の労力を掛けて書き上げた労作と思われる。そう思えるほど良く練られており、緻密である。
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56 人中、53人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 何百冊か読んだ時代小説の中でこれがベスト, 2003/8/19
「父を愧じてはならん」の言葉を残し、主人公の父親は刑死。残された少年は謀反人の子として蔑まれ、藩内で過酷な忍苦の日々を過ごす。しかし、その鬱屈したエネルギーを剣の修行で昇華し、少ないながらも堅い友情で結ばれた友を得ていく。青年剣士へと成長した主人公は、父を死に追いやった苛烈な派閥争いに巻き込まれ、自らの運命に立ち向かう。

完成度の高いストーリー、端正な文章、常にベストを尽くした主人公が残す爽涼感、過ぎにし少年時代と淡い初恋への愛惜の念。藤沢周平の代表作というだけでなく、時代小説の最高傑作のひとつと言える。
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33 人中、29人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 10年後にもう一度読みたい, 2003/2/25
藤沢周平の一番の小説ということで、会社の大先輩から紹介を受けて読みました。
(1)まず感じるのは、描かれている風景が「小説 上杉鷹山」の風景とよく似ているということ(もちろん表現方法は違いますが)。巻末には「蝉しぐれ」は山形新聞の連載小説だったとあるので、まあ納得した次第です。
(2)内容的には、江戸時代の地方の藩で、子供の居ない藩士の家に養子に入った少年が成長して、跡を継いでいく様子を描いたものです。底流には「今こうしている間にも人が生まれ人が死んでいく」という観念が流れていて、それでも「1人の個人で見れば成長を通して変わっていくようであり変わらない部分がある」と著者は言っているようでもあります。
(3)結末では10代半ばのお互いの気持ちを確かめ合うシーンは、私(39歳)には到底まだ早い内容で直ぐには消化しきれないです。この部分は、とって付けた感もありますが、衝撃を受けたことも事実であり、10年後にもう一度読んでみたいです。
(4)全編を通しては、流れるように読めて、風景描写が目に浮かぶようであり、色んな事件を読み進むうちに、果たして結末は吉か凶かと心配して読み進みます。最近は無意味に長い作品がよくあって辟易しますが、「蝉しぐれ」は1000ページくらいあっても楽しめたと思います。
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