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鷺と雪
 
 

鷺と雪 (単行本)

北村 薫 (著)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

帝都に忍び寄る不穏な足音。ルンペン、ブッポウソウ、ドッペルゲンガー…。良家の令嬢・英子の目に、時代はどう映るのか。昭和十一年二月、雪の朝、運命の響きが耳を撃つ―。


著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

北村 薫
1949年、埼玉県生れ。早稲田大学第一文学部卒業。大学在学中はミステリ・クラブに所属。高校で教鞭を執りながら、84年、創元推理文庫版日本探偵小説全集を編集部と共同編集。89年、「空飛ぶ馬」でデビュー。91年「夜の蝉」で日本推理作家協会賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 261ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2009/04)
  • ISBN-10: 4163280804
  • ISBN-13: 978-4163280806
  • 発売日: 2009/04
  • 商品の寸法: 19 x 13.8 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (19件のカスタマーレビュー)
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5つ星のうち 5.0 一番大きな謎, 2009/8/5
提示される謎。その向こうに通奏低音のように流れる「時代」。
この三越や教文館、服部時計店などに囲まれた、いとしくも懐かしい帝都と女学生・・・・読了後、一番大きな謎、が私の心をとらえます。
段倉のごとき「壮士・扇動者・エピゴーネン」が群がり出て、その「意見」/我が国の将来も正義もすべからく云々、と騒ぎ、それに批判的な言動をしようものなら、「暴漢」に襲われ・・・そのようなものに「根こそぎ」にされ、されつつも。「これからの若い方のおそばに在ってみてみたい」と、ヒロインを支えていく女性運転手。
まるで歴史・社会とは無縁のように、「殿方」と「社会」とに、当然のごとく沿っていく少女、道子のように、その強くて鮮烈な魂を「令嬢」の仮面に隠しつつ、そこらへんの有象無象の「紳士」などリスと名付けた愛馬で蹴散らして生きて・・・それでも、恋して。憧れて。
「国家という大きな機械がそれを望んでいるのです。」「軍の形さえ整えば。ことは一気にすすむでしょう。」・・・そうのたまうのはエリート参謀本部将校、いわば、統制派、一方、地方農民の困窮、わが部隊内の兵の実家、北の方の故郷におこる飢饉の悲惨を、恐慌と、飢饉と、人身の紊乱のこの「昭和の世」を、純真にまっすぐに、何とかしたいと考え、心ひかれた少女のもとに、愛読書(それも美しい詩集など)をあえて送り、身辺整理して、ことに向かう、若い下士官。
彼らをあおり、だまくらかして、ことがなったときにはその成果だけを己の立身のために利用しようとし、一方形勢不利と見るや、あいまいな態度からついには裏切っていく皇道派陸軍中枢。
桐原中将はいかに。
あるいは、弓原叔父は、あの若き士官たちを裁く立場にたったのか。
花村の父は、国家統制の締め付け、国家総動員法の下で、その会社をどうできた。
その後のこの国およびこの国の周囲を巻き込んだ巨大な悲劇の中で、彼らの運命はどうなっていたのだろうか。このシリーズから私自身が感じるのはやはり、「こういった、ひとりひとりはまっすぐで誠実に生きようとして悩み進んで行ったはずのこの国が、なぜ、どうのようにあのような悲惨で憎しみ深い道に転げ落ちていったのか」ということなのですが。
ああそして。
宮部みゆき氏の蒲生邸事件を重ねて合わせて。英子さんが無事生き延びたとしたら、彼女は玉音放送を26歳で聞いたことになるのですね(どこでどうやって・・・生き延びて聞けたのでしょうか)。
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14 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 堪能しました, 2009/7/27
昭和11年の2月になんの事件がおきるのか・・・。
歴史に通暁している読者ならば、その年号ですぐぴんときてしまうのだろう。
だが、あまり詳しくはないわたしにとって、このラストは後ろから串刺しにされたも同然のショック。
それまでの「わたし」=主人公英子嬢が、貿易商で英国通の父上や気がよくてやさしいお兄さんに囲まれ大切に守られ、花のような青春の入り口で初々しく在ること、それにあのような形の結末を迎えさせるということ、日常の小さな謎解きではなく、歴史の大きな奔流に否応もなくまきこまれていってしまう、痛ましい少女期の終焉であるということが、胸にせまる。
三部作の最終話として、この結末で終わらせることで、小説の外に開かれたよりおおきな物語へとリンクしていくのが、なんともいえず感無量だった。
直木賞バンザイ!!
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14 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 現代にどう繋ぐか, 2009/7/16
第141回の直木賞受賞作品である。本のレビューからややそれるが長年に渡り候補になりながら受賞が叶わず、喉に骨が引っかかるような思いであった北村先生に心からお祝いを申し上げたい。

この小説は三部作の最後となるシリーズで日本が大きく傾いていく前夜を女学生とそれを護る女性運転手という二人が事件(事件というほどに大変なものではないが)を解き明かしていく物語である。

いささか時代背景もあり、華族の悩みみたいなものは理解しがたい部分はあるが、物語を通じて何か我々が最近どこかに忘れてきた大事なもの、それは家族を思うことや社会のあり方や、利己的ではない抑制の効いた人間関係などが、やはり大切なんだということを決して説教じみて語るのではないところがよい。

長いシリーズの後半部分なんでいよいよ最後のクライマックスがどこへたどり着くのかが、この本の一番最初のエピソードで分かってしまうのも仕方ないのであろう。是非とも「街の灯」、「玻璃の天」とあわせて読んでいただくことをお勧めする。
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