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イデアの洞窟
 
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イデアの洞窟 (単行本)

by ホセ・カルロス・ソモザ (著), 風間 賢二 (翻訳)
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Product Description

出版社/著者からの内容紹介

イギリス推理作家協会賞受賞の話題作
古代ギリシアの殺人を描くミステリ『イデアの洞窟』の脚注の中でテクストの謎に翻弄される訳者の正体は──驚愕のメタ・ミステリ


内容(「BOOK」データベースより)

「古代ギリシア、アテネ。野犬に食い殺されたとおぼしき若者の死体が発見される。だが不審を抱いた者がいた―“謎の解読者”と異名をとる男、ヘラクレス。調査に乗り出した彼の前に現われるさらなる死体。果たしてこの連続殺人の真相は…」という書物『イデアの洞窟』。その翻訳を依頼されたわたしは、物語世界を傷つけかねない頻度でちりばめられた象徴群に不審を抱く。ギリシアで「直観隠喩」と呼ばれた技法だった。だが『イデアの洞窟』のそれは過剰すぎた。やがて身辺に怪事が頻発しはじめ、わたしは何者かに監禁されて…という異形の形式が驚愕の結末へと読者を導く破格のミステリ。めくるめく謎の迷宮に「作者探し」の興趣も仕込む、イギリス推理作家協会最優秀長篇賞受賞作。

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6 of 8 people found the following review helpful:
2.0 out of 5 stars 期待はずれ。, 2004/8/15
By ベック - See all my reviews
(TOP 1000 REVIEWER)   
これは期待ハズレでした。本書の体裁は充分魅力的なのですが、どうも作者のたくらみが成功しているとはいえません。注釈小説といえば、本書の解説でも言及されているとおり、やはりナボコフ「青白い炎」、ダニエレブスキー「紙葉の家」が有名なワケで、前者は敵前逃亡したのでなんともいえないんですが、後者については作者のたくらみにまんまとハメられたぼくとしては、どうしても比べてしまうワケで、そうすると本書はまったく見劣りするんですよね。本書の注釈はほんと腹立つくらい無意味で、わざわざ解説してもらわなくてもいいよっていいたくなるほどうるさいんです。テキストに埋め込まれた無数の謎?そんなもんどこにもないんです。テキストの隠喩はどれをとっても一目瞭然なんですから。エピローグまで読んで、全貌が明らかになって頭の中が整理ついて、ああそういうことだったのかともう一度パラパラ読み返してもやはりこの注釈はゆるせない。もうちょっと遊んで欲しかった。
というわけで、まだミステリも、ポストモダンもあんまり読んでないっていう方には、おもしろいかもしれません。
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5 of 7 people found the following review helpful:
4.0 out of 5 stars 隠喩の舞踏会, 2004/8/8
 単にタイトルに惹かれて手にとって見ただけであったが、読んでみるとなかなか素敵な一つであった。目先が薄ぼんやりと霞んだ展開の仕方もあり、休む間もなく350ページを読んでしまった。「わたし」はギリシャ語で書かれた『イデアの洞窟』の翻訳に着手し、脚注の形でその進行状況が語られる。古代の学術書・資料には原典にも「誰々の編集」というものがあり、この『イデアの洞窟』には一人の編纂者しかいなかった。「わたし」はやがて、この本の異常な性質に気がつき編者に連絡を取ろうとするが、彼は既に『イデアの洞窟』に呑み込まれていた。…………。

 二重構造になっている。というのはそのままの意味で、「わたし」の世界と『イデアの洞窟』の世界の二つが平行して進行することを指す。この『イデアの世界』の中では殺人事件が起こり、ホームズとワトソンが調査をして回るというお話なのだが、これがまた入り組んでいて面白い。ホームズというのは私の比喩で、作中では「ヘラクレス」というが、その名の通り、作品の文体は「直観隠喩法」という、作品の主題から離れたイメージを読者に喚起する手法が用いられていて、それにより「ヘラクレスの12の受難」が象徴的に現れる。これは一体なにを意味するのだろうか?こうして翻訳者の「わたし」は『イデアの洞窟』に引きずり込まれてゆく。この「直観隠喩法」というのは時代的に考えても、著者の勝手な創造だと思われる。
 エーコやナボコフが既にある現代にとっては、何とも手法に斬新さが無いと感じられるかもしれないが、この手法の面白さをここまで使い切るのは楽しい。読むのに予備知識として古典ギリシャ悲劇、プラトンについて少しあったほうが楽しく読めるだろう。

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1 of 2 people found the following review helpful:
4.0 out of 5 stars 迷宮の小説, 2007/5/26
By 紫陽花 "玲瓏" (神奈川県相模原市) - See all my reviews
(TOP 50 REVIEWER)   
読む者を迷宮の世界に運ぶ小説である。一般にメタ・ミステリとして評価されているようだが、むしろ斬新な手法を駆使した意欲的なミステリと考えたい。プラトンが実名で出てきたり、イデア論議が展開される場面があったりするが、作品自体は衒学的ではない。

土台の物語は謎の人物が書いた古代アテネで起こる美青年連続殺人事件。探偵役は<解読者>ヘラクレス。物語は英雄ヘラクレスの冒険談を模して12章から成る。そして本作自体は、主人公がこの物語を夥しい注釈付きで翻訳して行く形で進行する。本作自身も12章から成るという凝り様。元の物語は「直観隠喩法」というメタファーを使って書かれ、章毎にヘラクレスの冒険談を暗示している。そして物語が進むに連れ主人公は登場人物に自身の姿を見るようになり、遂には物語に主人公が登場するようになる。ここに至って読者は、主人公が物語を翻訳しているという設定が現実世界のものなのか、主人公の妄想なのか曖昧模糊としてくる。更に主人公は何者かに監禁された状態で翻訳を続ける。そして最後に待っている"真実"とは...。これが現実世界なら物語を書いたのは誰なのか ? そして、本作における主人公の存在意義は ?

(私小説ではない)虚構小説における登場人物と作者(翻訳者)の関係の諧謔的考察と古代アテネ社会の風刺的描写を通じて、人間社会における"真実"の虚妄をトコトン追求した傑作ミステリ。
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