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グロテスク
 
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グロテスク (単行本)

by 桐野 夏生 (著)
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Product Description

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 『OUT』 『柔らかな頬』など、単なるミステリーにとどまらない作品を生み出してきた桐野夏生が、現実に起きた事件をモチーフに新たな犯罪小説を書き上げた。自身をして「その2作を超えて、別のステージに行ったかな」と言わしめた作品だ。

   主人公の「わたし」には、自分と似ても似つかない絶世の美女の妹ユリコがいた。「わたし」は幼いころからそんな妹を激しく憎み、彼女から離れるために名門校のQ女子高に入学する。そこは一部のエリートが支配する階級社会だった。ふとしたことで、「わたし」は佐藤和恵と知り合う。彼女はエリートたちに認められようと滑稽なまでに孤軍奮闘していた。やがて、同じ学校にユリコが転校してくる。

   エリート社会に何とか食い込もうとする和恵、その美貌とエロスゆえに男性遍歴を重ねるユリコ、そしてだれからも距離を置き自分だけの世界に引きこもる主人公。彼らが卒業して20年後、ユリコと和恵は渋谷で、娼婦として殺されるのだった。

   いったいなぜ、ふたりは娼婦となり、最後は見るも無残な姿で殺されたのか。そこに至るまでの彼女たちの人生について、「わたし」は訳知り顔で批判を込めて語っていく。しかし、ユリコと和恵の日記や、ふたりを殺害した犯人とされる中国人チャンの手記が発見されるに従い、主人公が本当に真実を語っているのか怪しくなってくる。つまり「わたし」は「信用できない語り手」だということが明らかになってくるのだ。その主人公に比べ、日記であらわになるユリコと和恵の生き様は、徹底的に激しくそして自堕落である。グロテスクを通り越して、一種の聖性さえ帯びている。

   読み手は何が真実か分からなくなるかもしれない。しかし読み終わったとき、この物語に不思議な重層性を感じるだろう。(文月 達)



出版社/著者からの内容紹介

「私ね、この世の差別のすべてを書いてやろうと思ったんですね。
些細な、差別と思っていないような差別。
お金も美醜も、家柄も地域も、勉強できるできないも、
全部の小さな差別をいれていこうと思ったんですよ。
エリートになればなるほど、たぶんものすごい差別が
いろいろたくさんあると思うんです。
競争が激しい。それが女の子の場合、もっと複雑になるというのかな。
厳しいんじゃないかと思うんですよ、女の子は。」
(「本の話」7月号 『グロテスク』著者インタビューより)

【本書の内容】
世にも美しい妹ユリコを持つ「わたし」は、ユリコと離れたい一心でQ女子高を受験して合格し、スイスに住む両親と離れて祖父とふたり暮らしを始める。エスカレーター式の名門Q女子高は厳然とした階級社会であった。佐藤和恵という同級生が美人しか入れないという噂のチアガール部に入ろうとして果たせず、苛立つのを、「わたし」は冷やかに見守る。
夏休み前に母が自殺したという国際電話が入る。ユリコが帰国するというので、「わたし」は愕然とする。同じQ女子高の中等部に編入したユリコは、その美貌でたちまち評判になるが、生物教師の息子木島と組んで学内で売春し、それがばれて退学になる。和恵はQ大学から大手のG建設に就職した。―そして二十年後、ユリコと和恵は渋谷の最下層の街娼として殺される。

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18 of 19 people found the following review helpful:
3.0 out of 5 stars よくかけていると思う、が、読後感はよくない・・・, 2005/10/6
By yuishi (千葉県) - See all my reviews
(TOP 500 REVIEWER)   
正直言うと途中引き込まれるように読んだ。だが、よく描けた小説が、かならずしも素晴らしい読後感をもたらせてくれるとは限らない。
本書が東電OL殺人事件に材をとっているのは知られた話。狂言回し的な女性を主人公に、彼女のモノローグと二人の売春婦、二人を殺したとされる中国人男性の手記を挟む構成。手記の中でそれぞれ自分の半生を振り返るが、書かれている事柄がそれぞれの立場で微妙にずれる・・・。誰が嘘を書いていて、真実はどこにあるのか・・・。
興味深いのは主人公の女性が単なる狂言回しではなく、自分に都合の悪いことは隠蔽するか糊塗する・・・。
彼女たちが通った私立の学校の中に厳然と存在した階級意識、世に出てみれば女性が一人で生きていくには屈折せざるを得ない男社会の中で、ひとりは美貌だけを頼りに生きていこうとし、一人は有名企業に勤めているというプライドに虚勢を張り、一人は超然とした孤独の道を歩む・・・。
3人の女性の半生追いながら、女性たちが抱える暗い一面を描く。それは題名通りのグロテスクな様相を現し始める・・・。二人が殺された後、主人公の女性がとった行動は・・・。
殺人事件はあるが、謎解きも犯人探しも本書の本題ではない。ひたすらにどろどろとした女たちの執念・怨念に満ちた生き方を記していく・・。
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32 of 35 people found the following review helpful:
4.0 out of 5 stars 「女」であることのグロテスク, 2004/10/10
佐野氏の「東電OL殺人事件」を読んだ時に妙に引っ掛かったのは、筆者の使う「堕落」という言葉だった。この本の底流には「娼婦になること」=「堕落」という社会的な決め付けのようなものが先にあって、それから高学歴を持った女性が娼婦になった「堕落」はどうして起こったのかが書かれているように感じたのだ。娼婦になることが堕落でない、と言いたいのではない。ただ、そうした決め付けが、事件を外側から捉えただけで、被害者の内面にたどり着いていないもどかしさのようなものに結びついていると感じたのだ。被害者の内面を描くことは、むしろフィクションでなければ不可能なのかもしれない。

しかし、だからと言って本作品が被害者の内面を完璧に暴いたものだと考えている訳ではない。小説である以上、それはあくまで作者の想像・創造の中のものでしかないからだ。ただ、この作品の中で「娼婦になること」=「堕落」という単純な図式で割り切れないものが描かれたように思うのである。

作品は4人の女性の独白の形で進んで行く。違う人物のはずなのに、どこか区別が曖昧なのは、この4人が別の人間でありながら、実は「女であること」に縛られた、同じ人間の別の相であるからではないのか。特にユリコの姉は、ユリコ自身ではないのかとすら思ってしまう。ユリコの美貌を厭い、憎んでいたのは、ユリコ自身も同じだったのではないか。彼女の名前が最後まで語られなかったのは、そこに理由があるように思えてしまう。

4人が見ている周り人々の姿は、どこまでが真実のものであるのか。誰かの目を通して見えてくる誰かは、その見つめている人の目からは逃れることができない。そこに見える歪みは、見つめている本人自身の歪みなのだ。

結局、娼婦になった彼女たちは、娼婦になることでしか自身を救えなかったのだ。どんな自分であれ、醜かろうと、仕事ができなかろうと、他から「女」であること認められ、自分自身に「女」であることを実感させてくれたものが、娼婦であったのだから。それを「堕落」と言うならば、その通りであろうが、少なくとも、この作品の中で彼女たちは、娼婦になることで、さまざまな差別からの自由を得たのであると思う。

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7 of 7 people found the following review helpful:
5.0 out of 5 stars 特に女性、読む価値ありです。, 2004/9/25
この作品を読むと、人間のおそろしく汚い部分を見せつけられているようで、胸が苦しくなりました。
けれど読んでいるうちに、登場人物たちと自分との差はさしてないのではないか、と思えて来ました。誰の心の中にも、人を憎んだり、うらやんだり、嘘をついたりするみにくいものが、住み着いている、と感じました。
そのみにくいものを、見て見ぬ振りをするのか、堂々と、向き合うのか。
桐野さんの人間に対しての観察眼にはまったく恐れ入ります。
人間のこんなにみにくい部分をありのままに書くのは、きっと桐野さんにとっても苦しかったのではないか、と思います。
読んだ後、どっと暗い、どうしようもない気持ちになりますが、私たち(特に女性)のなかに巣食うみにくい固まりと向かい合うため、読む価値はあると、思います。
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