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タングステンおじさん―化学と過ごした私の少年時代
 
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タングステンおじさん―化学と過ごした私の少年時代 (単行本)

オリヴァー サックス (著), Oliver Sacks (原著), 斉藤 隆央 (翻訳)
5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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   『レナードの朝』『火星の人類学者』など、優れた医学エッセイで知られる脳神経科医オリヴァー・サックスが化学に心酔した少年時代を振り返ったエッセイ集である。19世紀半ばにロシアからイギリスに移住したユダヤ人の孫として生まれた著者は、献身的な医者を両親に持ち、化学、物理、生物学に通じる叔父や叔母のいる理系一家で育った。なかでも、とりわけ興味をそそられたのが金属だった。周囲の薫陶を受けつつ、やがて少年は華麗な変化を巻き起こす物質たちの虜(とりこ)になってゆく。

   とにかく面白い――本書を読み終えた感想はこのひと言だった。本書のテーマは無機化学だ。無機化学というといかにも無味乾燥な響きがして、実際、味気のない啓蒙書が多いものだが、著者が描き出す世界はこの上なく豊かに彩られていた。電球のフィラメントを作る会社経営者であるタングステンおじさんをはじめ、具体的で博物学的な知識を教えてくれる面々はまるで生きた博物館だ。水銀に浮くタングステンの比重に驚嘆したり、猛毒の塩酸と苛性ソーダを混ぜた溶液を飲んでみたり、サウス・ケンジントンの科学博物館に飾られた周期表の前で何時間も夢見心地で過ごすなど、みずみずしい感性の少年が実験に挑み、物質の魅力にとりつかれてゆくさまは、まさに化学をめぐる冒険であり、読む者は引き込まれずにいられない。

   何よりも、化学を既知のものとして教科書的に説明するのではなく、“センス・オブ・ワンダー”をもって自然の神秘とその謎解きをつづっているのが本書の魅力の源泉である。加えて、元素の発見から周期表、放射線、量子化学まで、時代背景とともに化学の発展を紹介する手法はわかりやすいし、随所に織り込まれたユニークで優秀なサックス家の人々や偉大な科学者たちのエピソードは読者を飽きさせない。とかく敬遠されがちなサイエンスの、しかも無機化学というテーマをこれほど面白く描き、その本質をしっかり伝える著者の力には完璧に脱帽だ。(齋藤聡海)



内容(「BOOK」データベースより)

「タングステンこそ理想的な金属だ」と、その根拠を力説してくれたおじ、遍在する数の法則を語るおば、真摯に働く医師の両親、発狂してしまった兄。強烈な個性がぶつかりあう大家族にあって少年サックスが魅せられたのは、科学のなかでも、とりわけ不思議と驚異に満ちた化学の分野だった。手製の電池で点けた電球、自然を統べる秘密を元素の周期表に見いだしたときの興奮、原子が持つ複雑な構造ゆえの美しさなど、まさに目を見張るような毎日がそこには開けていた…だが、化学の魅力は、実験で見られる物質の激しい変化だけではない。キュリー夫妻ら、研究に生涯を捧げた人々の波瀾万丈のドラマもまた、彼にとってまばゆいばかりの光芒を放っていたのだ。敬慕の念とともに先人の業績を知るにつれ、世界の輝きはいっそう増してゆく。豊饒なる記憶を通じ、科学者としての原点と、「センス・オブ・ワンダー」の素晴らしさをあますところなく伝える珠玉のエッセイ。

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5つ星のうち 5.0 体験する化学のおもしろさ, 2004/3/21
驚いた。いつもは専門の脳神経科医としての臨床体験から、システムとしての人間の不思議さ、深遠さを語ってくれる著者が、この本で語っているのは物質化学だ。それがまた化学の歴史をたどるように、ひとつひとつを自分で体験しながら理解していっているのだから、すごい。しかも十代前半で、である。周期律表のそれぞれの元素について、ここまで馴染んでいる人は、物理、化学の専門家でもそういないのではないだろうか。おかげで著者の少年時代を追体験しながら、読者も物質の成り立ちや化学の歴史を身近な感覚で学べてしまう。科学を日常生活に即して学ぶことの意義や、著者の人間を見る眼の表れなどについては、全部訳者があとがきで書いてくれている。とにかく読んでみれば、科学のおもしろさを味わえること、請合いである。
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9 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 待望の自伝です, 2003/11/1
オリバーサックスの待ちにまった自伝です
彼独特の面白い思考形態がどのように育まれていったかが
垣間見れてファンにはたまらない一冊です

しかし、読めば読むほど面白い家族だったんだなあと思います
お母さんとお母さんの家系がすばらしい
私も普通を気にしながら生きるのは止めよっと!!

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8 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 自伝と化学史エッセイの織り成す結晶, 2003/11/10
この本はメディカル・エッセイで有名なオリヴァー・サックスの少年時代の自伝だ。と同時に、化学史の面白いエッセイになっている。著者サックス氏を知らなくても、私たちが高校までにならった知識がどのようにして化学者たちによって得られてきたのか、その生き様とともに知ることができて楽しい。そんな組合せが実現したのは、著者が「タングステンおじさん」など金属と出会う機会を持って以降、少年時代に激しく化学にのめりこんでいたからだ。化学史といっても自然体で語られるので教科書臭さはないし、自伝だからといって私的な話で終わるわけでもない。半世紀以上前の英国の空気も感じられて一気に読み終えて、またもサックス氏の織り成す世界にやられたと思った。
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