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恥辱
 
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恥辱 (単行本)

J.M. クッツェー (著), J.M. Coetzee (原著), 鴻巣 友季子 (翻訳)
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)

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   舞台はアパルトヘイト撤廃後の南アフリカ。離婚を2度経験している大学教授のデヴィッドは、若いころから奔放な性を楽しんできたが、52歳になった今でもその欲望は衰えを知らない。そんなある日、彼は20歳の女子学生に強烈に引かれ、歳の差も社会的な立場も考えずに彼女を追いまわすようになる。半ば強引に彼女と関係を持ったデヴィッドはセクハラで告発され、軽蔑されて憎まれて、追われるように大学を去る。娘が経営する自作農園に身を寄せて再生の道を模索するが、そこにはさらなる恥辱が待ち受けていた。

   本書でブッカー賞史上初となる2度目の受賞を果たしたJ・M・クッツェー。2003年には、文学的功績を認められてノーベル文学賞受賞の名誉にも輝いている。簡潔で鋭い文章を武器にするクッツェーが描くのは、新旧の思想や力が混在する社会に暮らす人々の心だ。カフカ的な不条理な展開を軸に、若さと老い、欲望と道徳のはざまで揺れる人間を冷徹なまでにまっすぐ見すえながら、読後感は決して冷たくはない。

   本書でも、主人公は性欲という泥沼の中で哀しいくらいこっけいにもがいてみせる。職も名誉も失いながら、それでも性欲に振り回されてしまう情けなさ。新しい価値観と古い価値観がぶつかり合う混乱の中で暮らす不安と無力感。だが、あまりにみじめな主人公に怒りすら感じながらも、読み手は物語から目を離すことができない。なぜなら、彼の弱さは人間(特に男性)そのものの弱さであり、彼が恥辱にまみれるとき、読み手もまた堕ちていく感覚を味わうからである。

   われわれはそうした情けなさから逃れることはできず、彼と同じくもがきながら生きていかねばならない。クッツェーの救いのない小説に不思議な温かみがあるとすれば、人生を不毛だとしながらも、苦闘する人間そのものは否定しない姿勢に共感を覚えるからであろう。(小尾慶一)



内容(「BOOK」データベースより)

52歳のケープタウン大学教授デヴィッド・ラウリーは、二度の離婚を経験し、以来、欲望に関してはうまく処理してきたつもりだった。だが、ひとりの教え子と関係をもった時から事態はすっかり変わった。胸高鳴る日々も束の間、その学生から告発されて辞任に追い込まれてしまったのだ。仕事も友人も失ったデヴィッドは、娘がきりもりする片田舎の農場へ転がり込む。誰からも見捨てられた彼を受け入れてくれる娘の温かさ、自立した生き方に触れることで恥辱を忘れ、粉砕されたプライドを繕おうとする。だが、ようやく取り戻したかに見えた平穏な日々を突き崩すようなある事件が…。転落し、自分の人生を見つめ直すことになった男の審判の日々を描く。この作品で二度のブッカー賞に輝く不世出の作家が贈る、落ちゆく人生を彷徨う男の物語。

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5つ星のうち 5.0 あえて反発をかってみせる実力, 2005/2/27
By ryouka1197 (東京都) - レビューをすべて見る
(TOP 1000 REVIEWER)   
「若くて美しい女性が好き」
この美意識に反感を持つのは、なにもフェミニストばかりではない。
若い男性からすれば、年寄り世代が自分のGFを横取りしている。さらにその理屈が、
自分はインテリで若造よりモノが分っているから、女子大生のうぶな美しさを摂取するのにふさわしいというものだ。
このいけすかない初老の教授と、それに追随して起こる社会的地位の転落は読んでいて気まずい。
女子大生のBFに車がいたずらされても訴えず、アフリカの農園で車を盗られて訴えようとするところなど滑稽なほどだ。

これは、「差別」ではなく「区別」の物語である。
教授は、インテリな自分とバカ学生を区別する。美人と不美人を区別する。
皮肉にも彼の娘は美しく装うことに無関心で、異性に関心がない。
そして南アフリカの白人の世界で「セクハラ」「重婚」にあたることが、黒人の世界では「女が生きぬく術」とさえなる。

どちらが正しいわけではない。境界線を引いた向こう側にはちがう理屈がまかり通る。
それに従えなければ、自分の居場所はないということだ。

教授は自ら境界線を引く人間でありながら、白人世界の掟を破り、境界線を越えていく。

最後に仔犬が登場する。足は不自由であるけれども、音楽を理解する賢さをもつ。
この仔犬のあり方が、その場所で認められないものの末路を象徴する。

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35 人中、23人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 日本人の肌は金持ち色, 2002/1/15
このレビューの引用元: Disgrace (ペーパーバック)
 Your skin looks rich.
 これが10年前初めて私が南アフリカを訪れたときに、一番つらかった言葉だ。そして、この本を読んでいて、その当時のことを如実に思いだした。
 確認しておけば、私の両親は日本人で、日本国内でこそ「日本人に見えない」と言われるが、アフリカに行けば東洋人または東南アジア人と通用する外見だ。

 当時の私はバブルの余韻残る日本社会の中ではとても高給取りとはいえないパートタイマー。南アフリカのダーバンでみやげ物を売る黒人の兄ちゃんに「金もってないから買いたくても買えない」と言ったのだが、返答は上の言葉だった。

 そして、その数日後、私はジョハネスバーグで強盗に遭って8000円ほどの現金と約2000円の腕時計を奪われることになる。作中のルーシーと同じ種類の経験とはいえないかもしれないが、この小説を読んでいると私の当時の苦しい気持ちを思い返さずにおれなかった。

 南アフリカは先進国と途上国を内包した国だ。4000万人以上の国民の大半は肌の色で経済力を推し量ることができ富と貧が偏在し、殺人とレイプが多発する。その一方で、世界で初めて心臓移植手術を行い、核兵器を生産した上で全廃した稀有な国だ。世界の富の象徴ともいえる金とダイアモンドを世界で一番産出しながら、成人の2割以上がHIVに感染している。その一方でムベキ大統領は「エイズとHIVウィルスは因果関係がない」と言ったりする。医療予算の急増を気にするがゆえに…。

 作品中、冒頭で主人公が女を抱くケープタウンのグリーンポイントは日本で言えば横浜の山下公園周辺と芦屋の雰囲気をまぜこぜにした感じだろうか。ケープタウン大学は日本ではあまり知られていないが、学術水準には定評があり、世界初の心臓移植手術を行ったのは同大学の付属病院だ。

 作中では南アフリカ社会の頂点に立つ人物が、底辺からの動きにいかに対応しなければいけないかが描かれる。新体制発足後はあまり日本で報道されなくなった南アフリカ社会の現実を伝える好著といえる。

 

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7 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 Captivating, 2005/3/3
このレビューの引用元: Disgrace (ペーパーバック)
This is an incredibly insightful story. With its and deep exploration of the relationship between father and daughter, Coetzee successfully brought out a story that is difficult to forget. The characters are rich and portray deep, though extreme emotions, rationale and impulse. Though quite understated and subtle, the writing is nevertheless rich in so meaning. There is everything to learn from this book. Coetzee's writing style is superb, the setting is ingenious and the pace of the novel is fast and absorbing.

In this novel, J.M Coetzee's brilliantly tells the story of the 52 David Lurie, a professor of communications at a Cape Town University, who is twice divorced and went around with the notion that having a woman is no problem. But when he realest that he is no longer alluring, he sought the convenient service of a prostitute, an arrangement that eventually came to an end, leaving him with no outlet for his virility. David Lurie finally convinced himself that an affair with a young female student was not bad after all and went for it. But then the complaint of sexual harassment turned his academic life upside down as he is fired. The unwritten rules of the society ensured that he longer found a place amongst them.
With that realization, David Lurie travels to the country side to a dangerous and isolated farm to write and spend some time with her daughter who ran an animal refuge and sold produce and flowers. Lucy as she is called is violated by thugs and with that David's disgrace became complete. David suddenly finds himself re-evaluating his life, his ties to people, his relationship with his only daughter, as well as his relationships with women. In all of those, he learnt that love is two-sided, a matter of give and take. In this novel one makes sense of the universally acknowledged fact that a man can understand who he is only when he comes to terms with his past.

Similar disturbing but riveting tiles are: DISCIPLES OF FORTUNE, CRY THE BELOVED COUNTRY

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5つ星のうち 5.0 鴻巣さんの翻訳が素晴らしい
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とても読みやすい文章だなぁと、まず思った。現在形で言い切型の文体で内容がするすると心地よく入ってきた。... 続きを読む
投稿日: 2004/2/9 投稿者: eyr4yrey4y

5つ星のうち 4.0 訳文について
ノーベル賞受賞で、代表作として売れているようである。訳者も近年人気の翻訳家らしい。私が持っているのは5版だが、訳文で気になる点があったので記しておく。53p、「... 続きを読む
投稿日: 2003/10/25

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