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充たされざる者 (ハヤカワepi文庫)
 
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充たされざる者 (ハヤカワepi文庫) (文庫)

カズオ イシグロ (著), 古賀林 幸 (翻訳)
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、日程や演目さえ彼には定かでない。ただ、演奏会は町の「危機」を乗り越えるための最後の望みのようで、一部市民の期待は限りなく高い。ライダーはそれとなく詳細を探るが、奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り…。実験的手法を駆使し、悪夢のような不条理を紡ぐブッカー賞作家の問題作。


著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

イシグロ,カズオ
1954年11月8日長崎生まれ。1960年、5歳のとき、家族と共に渡英。以降、日本とイギリスのふたつの文化を背景にして育つ。ケント大学で英文学を、イースト・アングリア大学大学院で創作を学ぶ。1982年の長篇デビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年に発表した『浮世の画家』でウィットブレッド賞を受賞。1989年には長篇第3作の『日の名残り』でブッカー賞を受賞した。1995年の第4作『充たされざる者』、2000年の第5作『わたしたちが孤児だったころ』の後、5年ぶりに発表した最新長篇『わたしを離さないで』は世界的ベストセラーとなっている

古賀林 幸
津田塾大学英文科卒、ボストン大学大学院修士課程修了、英米文学翻訳家、恵泉女学園大学特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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5つ星のうち 5.0 光と影の絵巻, 2008/11/24
カズオ・イシグロの初心者として、3冊目のこれを読了し、今その面白さと美しさに“圧倒”されている。
著名なピアニスト、ライダーの行く手に、人の心そのものと、人の縺れた関わりの間にある迷路が次々にたち現れる。出口を失って彷徨い、また道を発見したかと思うと、さらに新たな迷路に迷い込む。
物語はcaricature仕立てで、曲りくねった心象の連鎖が延々と執拗に辿られるにもかかわらず、その心象が投影される不思議な建築や空間の描写の美しさには意表を衝かれる。
現代音楽のマレリー、カザン、ヤマナカなど架空の作曲家がたびたび登場するが、カリカチュアライズされているにも関らず、不思議にそのゴシック的空間の中から、“垂直線”の透明かつ不協和な音がリアルに聴こえてくるから不思議だ。
・・・いつかこの続編をぜひとも読んでみたい。深い心の迷宮と東欧風の風景が交錯するシックな闇と、精緻に彫りこまれた建築空間の内部に響き渡る、光のようなカザンのカデンツアを聴いてみたい。
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6 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 充たされない!ことが褒め言葉, 2008/2/24
主人公がある町にやってきて起こる出来事。
一見何の変哲も無いような小説に思えるが、読んでみるとこれがどうして・・・。
これでもかこれでもかと主人公の前に立ちはだかる不条理な出来事。
救われる結末なのか?いったい事態は好転するのか!?と思い始め、ページをめくるのがもどかしい。
「いったいどうなるんだ!」と叫び出したくなりながら、それでも本を投げ出さずに読んだ。
ハラハラする長い小説だが、私が読み終えた後発したのは「充たされなかった・・・」という言葉であった。
タイトルは小説を読んだ人も含まれるのか?
私自身も「充たされざる者」?と思い、つい笑ってしまった。
読後の「充たされない度」は満点である。挑戦するつもりで読むのがおすすめ。
パラドックスのようであるが、「読んだ!」という充実感とともに、カズオ・イシグロの小説に益々興味が湧いたのであった。
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10 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 危険な夢幻性, 2007/9/27
By 野火止林太郎 (埼玉県) - レビューをすべて見る
(TOP 500 REVIEWER)   
読み進めているとドップリと作品世界に巻き込まれ、日常的な意識に霞がかかってくるような「危険な」作品だ。これこそ小説であり、大部の文庫本の半分も読んでくれば、それは心地よくなる。とは言え、作品世界は不条理の連続。しかも、主人公のピアニストは次々と現れてくる不条理をその都度肯定していく。また、主人公に関わる登場人物たちは、主人公の過去に関わったことのある人物たちであると、主人公は「思い出す」ようになる。それは欺かれているのか、幻想世界の錯覚なのか・・・・。過去にあらざる記憶。それは本来、矛盾なのだが、主人公は彼の周りに立ち現れてくる人びとによって、様々な期待をかけられることで、過去を想起し、彼らとの過去があったかもしれないという想念に落ち着き、彼らのために生きようとするのだ。
そう、この不可思議な世界、これこそ小説にしかなし得ない世界であり、しかもこれこそリアルな作品ともいうこともできるだろう。
松浦寿輝の『半島』にも、本作と似たようなテイストがあるが、主人公が右往左往しながら、それでも事態を肯定的に受け止めてしまうという究極の不条理(これこそ現代社会ではないか)の描写において、イシグロよりはロマンチックに過ぎる。つまり不徹底なのだ。
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