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古代エジプトで発展した幾何学の曙(あけぼの)から、物理学の究極理論と目される最新の超ひも理論(M理論)にわたる幾何学の歴史を、物語性豊かに解説している見事な作品だ。「ユークリッドの窓から」というタイトルは原著
『Euclid’s Window』の直訳であるが、このタイトルでは、幾何学の易しい解説書か、面白い話題を集めただけの本だと誤解する人もいるかもしれない。だが、本書は普通の入門書でない。
全体は5部に分かれており、それぞれの部で幾何学に目覚ましい変化を与えた人物を中心に据えている。すなわち、ユークリッド、デカルト、ガウス、アインシュタイン、ウィッテンが主人公。扱う内容で言えば、平面幾何学(幾何学と論証)、解析幾何学、微分幾何学、一般相対論、超ひも理論の解説になっている。ウィッテンについては馴染みのない人もいるだろう。彼は1990年に京都で開かれた国際数学者会議で数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞した人で、いずれはノーベル物理学賞も取るだろうと言われている研究者だ。
すべての解説において、主人公に関すること以外の歴史的な事実や登場人物の特徴、さまざまなエピソードを適切に取り入れていて、描かれている時代の様子を想像しながら、飽きることなく読み進んでいける。著者の略歴を見ると、カリフォルニア工科大学の教授からサイエンス番組の脚本家になったとあるが、その実力は存分に示されていると思う。翻訳も丁寧で正確なので安心して読める。(村藤一雅)
内容(「BOOK」データベースより)
ユークリッド幾何学は数学入門者の通り道。わたしたちはいまでも、二千年以上もまえにユークリッドが作った窓から数学の世界を覗き込む。この窓がなければ、アインシュタインがあの偉大な発見をすることはなかったかもしれない。数千年におよぶ幾何学の歴史のなかで革命的な仕事を成し遂げた人びとは、ユークリッドの窓枠にさまざまなガラスをはめ込んで、そこから見える宇宙を解き明かそうとしてきた。数式を解くための数学ではなく、数学を作り上げていくことの楽しみを知るための一冊。