おもしろいのは、大方のメディアが利害関係を隠しながら情報発信をしているのに対し、JMMでは、利害関係をはっきり謳って、そのうえで私見を語っていること。本書に掲載されたエッセイでもその姿勢は貫かれており、取り上げられる政治・経済の諸問題に関して、関係者の利害を明らかにしたうえで議論を展開している。単なる情報提供ではなく、読者に考えさせる内容になっている点が特徴だ。
登場する政治・経済関連のトピックは、日本の構造改革や雇用問題、デフレ、個人の資産運用、9.11後のアメリカの軍事行動など。あいまいな議論を避け、問題の明確化・利害関係の明確化を徹底することで、具体的に議論を進めている。
著者自身がメディアに詳しいこともあり、マスコミ報道に関しては、とくに興味深い指摘がなされている。世の中の動きとそれを伝えるメディアに関心を向けることで、個人の問題意識を高めてくれる、そんな本である。(土井英司)
マクロからミクロへ。
混迷する日本経済を凝視し続けてきた作家・村上龍が、主宰するメールマガジンJMMにおいて、編集長として到達した新たなパースペクティブ。
前著『だまされないために、わたしは経済を学んだ』で注目を浴びた新しいエッセイ集「Weekly Report」シリーズ待望の第二弾!
その思考の軌跡が凝縮された貴重な言葉の数々……。
☆「日本がダメになっている」「日本人がダメになっている」という言い方は間違っていると思います。
★無知は罪なのだ、というコンセンサスのない社会でのニュース報道には限界があるのかも知れません。
☆国民的な一体感を損ねると大変なことになるという「幻想」に支配されているような気がします。
★金融・経済も飽きたんじゃないのか、と言われることがあります。そういうときには違和感を覚えます。
☆日本人をマスで捉えることが、すでに不自然になっているということだと思います。
★不良債権処理の不全とその遅れで、利益を得てきたのは誰なのでしょうか。
☆構造改革で血を流さないと日本の未来はない、というような表現が新聞に載らない日はありませんが、いったい誰が血を流すのか、まったく曖昧です。
★ここへ来て、構造改革派の戦略ミスが明らかになった気がします。
☆痛み、という曖昧な表現で、構造改革の犠牲者が失うものを隠蔽するのはフェアではないということです。
★構造改革はその本質に国民的一体感を壊す装置を含んでいます。
☆「日本は」「日本人は」という主語を使うことによって隠蔽されてきたのは、相反する利害を持つ層が存在するという事実だったのです。
★二十一世紀に日本人はどう生きればいいのか、というような問いには答えようがありません。問いの立て方が最初から間違っているからです。
☆問われているのは、日本社会が格差を伴う多様性と対立を受け入れることができるかどうか、それだけなのだと思います。
★「全国民」をハッピーにするような短期的な政策は一切存在しない、ということを政府はなるべく早く明言すべきではないでしょうか。
☆個人資産を守る、という風に考えると、「日本国民」という括り方がほとんど意味をなさないことがわかります。
★JMMを創刊したころと社会的な状況がほとんど何も変わっていないことに気づきます。
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