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広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像 (中公新書)
 
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広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像 (中公新書) (新書)

服部 龍二 (著)
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商品の説明

出版社 / 著者からの内容紹介

日露戦争後、職業外交官の道を歩み始め、欧米局長・駐ソ対大使など要職を歴任した広田弘毅。満州事変以降、混迷を深める一九三〇年代の日本で、外相・首相として、欧米との協調、中国との「提携」を模索する。しかし二・二六事件以降、高圧的な陸軍と妥協を重ね、また国民に広がる対中国強硬論に流され、泥沼の戦争への道を開いた。東京裁判で唯一文官として死刑に処せられ、同情論が多い政治家・広田の実像に迫る。


内容(「BOOK」データベースより)

日露戦争後、職業外交官の道を歩み始め、欧米局長・駐ソ大使など要職を歴任した広田弘毅。満州事変以降、混迷を深める一九三〇年代の日本で、外相・首相として、欧米との協調、中国との「提携」を模索する。しかし、二・二六事件以降、高圧的な陸軍と妥協を重ね、また国民に広がる対中国強硬論に流され、泥沼の戦争への道を開いた。東京裁判で唯一文官として死刑に処せられ、同情論が多い政治家・広田の実像に迫る。

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5つ星のうち 5.0 犯罪的な不作為, 2008/7/2
By picander - レビューをすべて見る
(TOP 500 REVIEWER)   
通説を否定し、広田が玄洋社の正式な一員であったとして本書は始まる。国士であることと合理主義的な外交官であることの二面性は、広田の外交に奥行きを与えるどころか、軸の定まらない広田の揺れを助長することとなる。「その姿は中国と欧米の間でよろめく日本を象徴していた」。
若い頃から大陸に憧れ日中提携を模索した広田が、日中開戦を避けられず、対中強硬派を説得できず、南京事件を黙認し、最終的には中国判事の賛成で(6対5で賛成が上回った)絞首刑とされる。
この逆説に満ちた広田の人生は、「軍部の方針に抵抗し続けた高潔な平和主義者が理不尽な判決により葬られた」とする城山三郎が描いたような悲劇とは言い切れない。本書が示すのは、対中強硬路線を叫ぶ陸軍と世論、世論頼みの近衛に、毅然と立ち向かったのではなく「消極的に賛成を繰り返した」結果、外交の選択肢を急速に狭めていった広田の弱さである。
南京事件における「かれの不作為は、犯罪的な過失」とした東京裁判の判定は、勝者の一方的な裁きとして無視できるものではない。国運を左右する決断は、世論とも軍部とも距離を置き、指導者の国家観に基づいてなされなければならなかったが、広田が盧溝橋事件以降、軍部や世論を押さえ込もうとした形跡は見当たらない。
広田は(東條ほか多くの軍人も)、人格高潔であったことは間違いない。広田の外務省内での人望の厚さも本書では示されている。ただ、国家の指導者ではなかった。チャーチル、スターリンといった高潔や倫理といった観念とは別の次元にいるリーダーと対峙するには、日本にあまりにタレントが足りなかったことが最大の悲劇であった。広田の消極性は、今日に到るまで日中関係の桎梏となっていることは間違いない。また、本書が示す幣原と広田の距離感は、昭和外交史の重要な視点であろう。城山三郎とは別の意味で、本書からは著者の広田、また昭和期の外政家に対する深い敬意を読み取ることができる。
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29 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 「落日燃ゆ」の人物像を覆す, 2008/7/14
By 革命人士 - レビューをすべて見る
(TOP 500 REVIEWER)   
本書を読む人はおそらく「落日燃ゆ」の読者だろう。「悲劇の宰相」像を強く打ち出した「落日」に挑戦するタイトルにもその点はよく出ていて、本書は読者を選んでいるともいえる。私もそうだし、著者も言っているが、城山三郎の傑作である同書に感銘した読者は多いが故に、同書のイメージに引きづられ、「陸軍の言いなりになった文官たち」という戦前についての歴史観のコンセンサスさえ生んでいたことを感じた。賛否両論あると思われるが、「落日」に感動した読者には相当なインパクトを与える本だ。

本書理解の前提として、「落日」の広田像を説明しなければいけない。「落日」での広田は、自らを積極的に売り込まず、流れるままに生きた。計らずして外相、首相になり、計らずして処刑された。また、平和主義者であり、中国との協調に全力を尽くしたが、陸軍の横槍でまったく不首尾に終わった。というものだ。しかし、本書はそうした広田像をまさにひっくり返す。広田は政談が好きで国士的な一面を持っていたこと。「落日」では否定されていたが、国家主義団体・玄洋社の社員だったこと。外相在任中、戦勝ムードに沸く世論に押され、陸軍以上の高圧的な交渉姿勢で中国国民党に臨み、ついには南京傀儡政権という陸軍の案に乗ってしまう。

日本が国際社会で孤立していく1930年代の大半、広田は駐ソ大使、外相、首相と顕職にあり続けた。駐ソ大使としては日中戦争処理などで卓越した手腕を挙げたが、外相、首相としては、軍部にはっきり物を言えず、失策が多かった。国内からは「弱腰」、外国から「嘘つき」と批判され、陸軍と激しく対立し続けながらその暴走を抑えきれず、内外から批判を受けた20年代の幣原外交(広田と幣原はそもそもそりが合わず、幣原時代は冷遇され続けた)に代わり、新たな外交ドクトリンとして、陸軍に一定程度妥協しながら、融和的な外交も維持するという広田外交が登場したが、結局、ますます陸軍に引きづられる結果になった。というのが、私の理解した本書の大筋だ。

時代の流れもあるが、歴史の転換点となった30年代、日本外交の中心に居続けた広田の性格が日本の帰趨に一定程度関与したことは否めない。対英米協調という点では幣原外交と一致していたが、対中国に関しては、広田の「日本がアジアを仕切る」という大アジア主義、国家主義的な考えに肯定的だったことから、日中戦争端緒で幣原のように「不拡大」を徹底することができなかった(幣原が満州事変処理で炎上したことを外で見ていたからかもしれないが)。また、陸軍に大幅に譲歩したため、陸軍の政治干渉に貢献してしまった。「落日」では乗り越えるには、時流と言うのはあまりに大きすぎる壁のように感じたが、本書を読むと、外交かとしてはともかく、政治家としての広田の淡白すぎる政策遂行に歯がゆいというか失望感がした。
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17 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 これまでの広田像を覆す衝撃的な内容, 2008/7/9
かつて城山三郎氏の名著「落日燃ゆ」に感動した読者(私も含め)にとって、
本書はこれまでの広田像を覆す衝撃的な内容である。
「落日燃ゆ」によって作られた「軍部の暴走を止められなかった悲劇の宰相」といった広田像に対して、
本書の著者は「過度に同情的な描写が広田の実像から離れている」と主張する。
本書によれば、広田の大きな失策は具体的には以下の三つがあげられる。
1)満州事変後の対中交渉において要求ばかりを押し付けようとした「広田3原則」によって、
対中関係をさらに悪化させた。
2)盧溝橋事件から始まった日中戦争の拡大を食い止めるのに消極的だったばかりでなく、
日本軍の快進撃に乗じて中国に対する和平条件をつり上げようとさえし、日中戦争が長期化する一因をつくった。
(このあたりは「落日燃ゆ」と大きく食い違う)
3)南京事件の報告が総領事館からあったにもかかわらず閣議に提起しなかった。
これらの事実は、広田が軍部の圧力に抗しきれなかったというよりも、
軍部に対して迎合的であったと言われても仕方がないように思う。
しかし終戦後の東京裁判(裁判の正当性は別として)での潔い態度はせめて評価されるべきだろう。
(余談ながら戦後になってからの昭和天皇の広田に対しての酷評も印象的。)
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