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何気ない上司のひと言で、会社を辞めてしまった中野貴奈子。失業した彼女を案ずる母の幸子の計略で、貴奈子が再就職したのは、鳶(とび)の零細企業、その名も「日本晴れ」だった。
彼女を取り巻くのは、元学生運動家で鳶頭(社長)のおじ勇介、アメリカに戦争を仕掛けようと日夜「まじめに」戦略を練っている風太・雷太兄弟、何でも偏差値に置き換えて表現してしまう剛、そして小学生のクセに生意気な口をきくツミなど、元気がよくて仕事もできるが、とんでもなく風変わりな連中だ。学者の父を持ち、超優良といわれた会社に勤めていた良家の子女には、想像もしなかった鳶職人の世界。貴奈子と彼らは、いくつかの衝突を繰り返しながら、お互いを認め合っていく。
著者は、数々の受賞歴のあるイラストレーター。アートミュージアム施設の設計、ロールプレイングゲームやCD-ROMの制作にも進出している。そんなヒキタの創作経験が、本書のドイツ人芸術家、ブリックのキャラクターに反映されているといえる。
彼の彫刻作品の取り付け依頼が、ある日「日本晴れ」に舞い込む。彼の作品は複雑すぎて、建物への取り付け作業をあちこちで断られていた。そんな彼の窮状を見かねて、「日本晴れ」の男たちは一肌脱ごうとする。現代美術の最先端の作品と、自らの身体を張った職人芸という両極端同士の奇妙な遭遇。ブリックはそれまで抱いていた「日本=商業主義」という考え方を改める。商業主義的とは正反対の、粋でいなせな世界が、どっこい生きている。貴奈子やブリックの静かな感動は、そのまま読み手にも伝わるだろう。(文月 達)
内容(「BOOK」データベースより)
超優良企業の総合職としてバリバリだった中野貴奈子は上司のひと言に魂を抜かれ、辞表を提出。プーの生活から再就職したのは鳶職人の集合体、その名も「日本晴れ」だった。俗世間からずれまくった異能の職人達が挑んだのは難易度特Aクラスの巨大な現代彫刻の取り付けと会社のユートピアの創造だった…。ひねりのきいた笑いとでっかい感動が炸裂!ひたすら面白い娯楽小説の新潮流。