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決壊 上巻 (単行本)

平野 啓一郎 (著)
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商品の説明

内容紹介

デビューから10年、平野啓一郎が連続殺人に挑む、新たな代表作誕生!

2002年10月全国で犯行声明付きのバラバラ遺体が発見された。容疑者として疑われたのは、被害者の兄でエリート公務員の沢野崇だったが……。〈悪魔〉とは誰か?〈離脱者〉とは何か? 止まらぬ殺人の連鎖。明かされる真相。そして東京を襲ったテロの嵐!“決して赦されない罪”を通じて現代人の孤独な生を見つめる感動の大作。


内容(「BOOK」データベースより)

2002年10月、全国で次々と犯行声明付きのバラバラ遺体が発見された。被害者は平凡な家庭を営む会社員沢野良介。事件当夜、良介はエリート公務員である兄・崇と大阪で会っていたはずだったが―。絶望的な事件を描いて読む者に“幸福”と“哀しみ”の意味を問う衝撃作。

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5つ星のうち 4.0 そのニヒリズムは必要か?, 2008/7/15
By あたりや55 (東京都葛飾区) - レビューをすべて見る
過去、これほどまでに読み手に試練を要求する小説は存在しなかったと思う。
作者は本作がドストエフスキーの影響下にあることを公言している。
しかし、本作はドストエフスキーですら想像できなかった現実、すなわち、唯一の希望であるはずのアリョーシャが最初に斃れて(斃されて)しまう「状況」を起点としている。(もちろん、比喩的な意味です)
市井のオッサンに過ぎない当方としては、正直言ってそのような状況には向き合いたくない。向き合いたくないが、読まなければ「こちらの負け」である。

で、嵐のようなハードパンチを耐えつつ、最終ラウンドまで戦い抜いて何が見えたか?
それは、いかなる叡智・理性をもってしても、膝を折らざるを得ないほど歪んでしまった社会構造である。
そのことを持ち駒を使い切って提示した作者の努力は賞賛に値する。恐らく、今の文壇に同一テーマを描ききれる才能は他にいない。

しかし、私は本作をどうしても肯定することができない。なぜなら、衝撃的な結末に持ち込むために、他者への想像力、あるいは素直な人道主義というものが踏み台にされている気がするからだ。そこまでのニヒリズムを貫き通す必要があったのか?

小説とは「希望」や「救い」、「活路」を示すための装置だと思う。別にハッピーエンドなんて望まない。微かな光さえ示されていれば、読み手には伝わる。本作にはそれがない。

人に本作を勧めるべきかどうかも分からないし、読んだ人と本作について語り合うのも気が引ける。そもそも、本書を読むのに費やした時間が自分にとって有意義なものだったのかどうかも分からない。そういう本である。
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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 素晴らしき現代(日本)の写実, 2009/9/7
想像や未来の予知などと言うよりは、明らかに現状を写実したものに近い。初めに素晴らしいと言ったように私自身はこの事を高く評価したいが、それでも同時にこの小説に欠点があるとすればその写実性になるだろうとも言わねばならないと思う。つまりそれは写実以上のものではない、現代日本に蔓延する病理とそれに対して実際にある悲鳴や批判、戸惑いやさらには共感、支持など、そういう実際にあるものだけをよく描いた、という「だけ」という言い方も恐らく全くの不可能ではないだろう、という事だ。その場合、本作の極めて優れた長所や意義はそのままケチをつける理由にもなる。実際本作で語られることは極めて切実で我々の身に、いや心に迫ってくるが、「なぜ人を殺してはいけないか」という問いを初めとして、どれもこれも殆どがどこかで聞いた事ある事ばかりである。小難しい言葉で飾られた思想のごときものも実質は同じであり、結局のところそれは今の時代の状況、現代人の抱える思いや言葉を代弁し語り、時代精神をそのまま描いただけなのである。本作のそういう時代精神・時代状況の写実は専ら殺人事件や犯罪をめぐる諸問題や諸言説を対象としている。責任能力や精神病の問題から警察の取調べの問題まで現代日本で騒がれる犯罪関係、法律関係のあらゆる問題が本作内には凝縮され扱われていると言えよう。それは私としては高く評価できる極めて意義ある事に思えた。
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7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 ドストエフスキー的興奮で、寝食忘れて読む, 2009/4/13
 凄い。
 ドストエフスキー没して百年余。ネットや映像等のメディア内では、誰もがラスコーリニコフになりうると同時に、誰もがラスコーリニコフを裁く判事となりうるし、イヴァン・カラマーゾフに殺人を示唆されたというスメルジャコフになりうる。そしてこの小説においては、スメルジャコフ的遺伝子をもち、スメルジャコフ的成育環境にあった者たちの復讐とも言うべき事態が起こる。
 この小説の凄さは、ドストエフスキー的な対話を軸に、ネットやメディアに溢れる言説を本物そっくりに活写し、かつ登場人物ひとりひとりの血を、体温を、リアルに濃密に伝えてくることだ。
 残虐な連続殺人に対して、メディアの新情報を今か今かと待ち、残虐な事実を知るたびに、やり場のない怒りを紋切型の喋りでしか表現できないもどかしさに腹立つ、という状況は、まるで現実そのもので、犯人の少年や家族の言葉は雑誌やテレビというメディアを通して、実在の事件そのものだ。そこに生身の少年がリアルに描かれることで、コメンテーターや教育者の正義の言説の空疎さが浮き彫りになってしまう。
 殊に沢野一家の悲劇は、前半のリアルな一家団欒の描写を経て、痛ましく胸に迫り、はからずも平成のスタヴローギンとなってしまう沢野崇の造形は真に魅力的だ。
 かなり前に同じ作者の「高瀬川」のレビューで「リアルな細部はおもしろいけど、急にエラソーな作者がカオ出すと興ざめ」と書いたけれど、平野啓一郎がここまでの構築力を持つに至るとは……不明を恥じる。ドストエフスキー以来のドストエフスキー的興奮で、寝食忘れて読んでしまった。
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