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内戦に明け暮れる架空の王国を舞台に、高らかに理想を掲げ、最後まで気高く生きる軍人の生涯を描いた長編ロマンである。著者は『ヤンのいた島』で、第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した沢村凛。3作目となる本書は、簡潔で、品格漂う筆致と、細部に至るまで構築された世界観を用いながら、歴史のダイナミックなうねりや、それに翻弄される人々の姿を見事にとらえた大作となっている。異世界という設定ながら、『三国志』や『水滸伝』などの雄大な歴史小説を彷彿(ほうふつ)とさせる作品だ。
貴族の血をひくものの、出生に複雑な事情をかかえるアマヨク・テミズは、軍学校を卒業し、西の駐屯地へ向かう小隊の隊長として赴任する。そこでアマヨクに下った命令は、王家の宝を盗んだ者たちの捜索だった。アマヨクは、野賊の6頭領のひとり、オーマの仕業であることを直感するも、逆に盗賊たちの策略にはまり、捕えられてしまう。伝説の野賊として名高いオーマとの出会いをきっかけに、アマヨクの波乱に満ちた運命が幕を開ける。
主人公は、正義を貫く英雄でありながら、必要であれば平気で嘘をつき、信念の為であれば人を傷つけることも辞さない。宿敵オーマに「血の通った当たり前の人間だった」と述懐させるように、きわめて人間臭い人物である。そんな主人公の無骨ともいえる生き様を軸に、物語には、権謀うずまく貴族達の争い、父親との相克、道ならぬ恋、ラストシーンでの謎解きなど、活劇としてのおもしろさがふんだんに盛り込まれている。その味わいは、まさに蕩々(とうとう)と水をたたえた大河のように、驚くほど深く、幅広い。(中島正敏)
出版社/著者からの内容紹介
生きろ、あくまで生きろ。失っていい命など、ひとつとしてないのだから……。
険しい山々に囲まれ悠久なる大河が流れ、そして、野賊との内戦が続くある王国。長年の内戦を終らせ、国に平和をもたらす――崇高なまでの理想と正義と信念を胸に、野賊との闘いに生涯を賭けた軍人テミズ。祖国を愛し、人を深く愛した孤高の男の波乱に富んだ人生ドラマを、圧倒的筆力で描く、新鋭による感動の大河冒険小説。
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