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太陽を曳く馬〈上〉
 
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太陽を曳く馬〈上〉 (単行本)

高村 薫 (著)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

福澤彰之の息子・秋道は画家になり、赤い色面一つに行き着いて人を殺した。一方、一人の僧侶が謎の死を遂げ、合田雄一郎は21世紀の理由なき生死の淵に立つ。―人はなぜ描き、なぜ殺すのか。9.11の夜、合田雄一郎の彷徨が始まる。

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49 人中、43人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 あれの1割も売れないだろうけど, 2009/8/1
4年ぶりの長編、上下巻、新潮社、オウム事件、宗教、芸術、そして社会問題にひるまず発言する作者、
という共通項を持つ「1Q84」が大ヒットを飛ばす中で刊行された新作ですが、二つの作品を続けて読み終えて、もともとある両者の違い以上に大きく異なる印象を持ちました。
いつまでも若者の立場にあろうとするものと、生きて老いることを引き受けたもの、という。

12年ぶりの合田雄一郎は世渡りを意識し、若い部下に舌打ちし、一言でいえば「おっさん」化して、笑いを誘います。
笑っていいんだよね?と戸惑い、文章そのものも昔よりはるかに読みやすくなっているため、自分は今までずいぶん誤解していたのかもと思ったりしました。
でも、合田の本質は変わっていませんでしたが。
特質や欠点や未熟さを抱えたまま、人は老い、同じ位置に立っていても周りの変化によって立場が変わってくる。
かっこ悪くなった合田には今までにない共感を覚えました。

しかし、そんな合田の姿をかき消すほど強い印象を残したのは、下巻の最後の最後。
福澤彰之が獄中の息子秋道にあてた数通の手紙と、その中に登場する西瓜をぶら下げた老人の姿でした。
どれほど知識を学び、修行しても、あるいは痴呆になっても、なお消えることのない子供への思い。
その切なさと温かさは、老いて見苦しく生きる現実を引き受けたものにだけ伝わります。
その前には、それまで芸術や宗教をめぐって膨大に語られた言葉すべてが薄っぺらく消えていきます。
その爽快さと感動を味わうためにも、延々続く芸術論とその数倍の量がある宗教論、流し読みでいいですから飛ばさずに、と言いたいですね。

一応星は4つ付けましたが、古くからの読者なら星5つの価値があろうかと思います。
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11 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 理解しがたい対象への接近, 2009/9/25
一般的な人間には理解しがたい対象、即ち現代芸術(抽象画)・動機不明の殺人・宗教に対して、どのように向き合うのかというテーマが真ん中に据えられています。これらの対象に合田雄一郎の眼を通じて深く、そう、沈み込むほどに深く入り込んでいくのですが、上巻の主要人物・福澤秋道の芸術と殺人、下巻の末永青年の死を契機に言葉が尽くされる宗教論(特に、オウムと古代インド宗教、禅宗との対比と本質論)に、入り込むというよりは埋め尽くされてしまう感覚が体を離れません。合田雄一郎も40を過ぎ、過去の作品に見られた表出する情熱は影を潜め、警察官という仕事や離婚した相手とその兄に対する考え方に変化が見られ、ただでさえ孤独であった彼が、殺人を犯した秋道に対しての父・福澤彰閑の何通にもわたる手紙を読む、あるいは執拗とさえ思えるほど宗教に対しての、いわば一見しても、あるいはそれ以上によく見ても理解しがたいものに対して「なぜ」という問いを繰り返しながら近づいていく姿は、決して華やかでもなく、恵まれたというわけでもない、要するに一般的な意味で言う幸せではない彼自身の人生に対する「なぜ」という思いと重なって、腹の底からの共感を感じました。彼は求めれば求めるほど、問い続ければ問い続けるほど孤独の影を濃くしていくようです。しかし、秋道に宛てた彰閑の最後の手紙には、息子に寄せる父の思いが感じ取られ、その思いに合田雄一郎も思いを寄せる様子が想像出来て救われます。この小説は、上下巻を通して、「分かる」とか「意味が通じる」といったいわば幸福な関係が断たれたものに対する接近を描いたものであり、一般的な「意味」からの自由を求めた者たちに対するレクイエムでもあると思います。日本では珍しい形而上学小説であるのと同時に、理解しがたいものが本当に我々の間近で頻発する現代への高村薫自身の向き合い方を表明した作品です。そして、立ち尽くしては内省し、問い続けては立ちすくみながら、今までとは違う何かを手にしたであろう合田雄一郎がこれから何処へ行くのか、次回作が待ち遠しくなる、本当に素晴らしい作品です。
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8 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 ロスコの「空」には、まだ「色」がある, 2009/9/16
・・・これは読む「修行」かもしれない。
 
NHK教育テレビで、マーク・ロスコの抽象的絵画とともに紹介された本書を、うっかり読み始めてしまった。上巻では芸術論が語られる。猟奇的殺人事件が起きた部屋で引かれた直線や色が、衰えかけた私の右脳を刺激する。何を意味するのか? いくつもの線のように証言が重なりつつ犯人の真意が浮かび上がろうとするが、描けない私はバーミリオン色の血の池地獄で溺れていく。

 そして下巻、都会のビルの中の寺、修行僧の不可解な事故死。延々と語られる宗教的な解釈、禅とヨガあるいはオウムの教義がどこがどうだったのかと。膨大な言葉を尽してそそりたつ壁は、まるでロスコのキャンバスそのもの。不本意ながらも私は、議論の中へ取り込まれることになる。混沌の私の左脳は、天上界のような論理の中で、下から上から表から裏から過去から現在から、”半眼”で時空を超えて、しかし、トボトボと彷徨う。

本を閉じた私に、ロスコの絵・・・これはもしやマンダラ?

 高村さん! ロスコの絵のような小説を書きたいとTVで言っていたあなたの試みはみごと成功したと思います。でも私は「座禅」よりも「行脚」が好き。言葉よりも感覚、感覚より実感の方が快い。突き抜けて良寛さんのようになった合田刑事に会ってみたいと思います。

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