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停電の夜に (新潮文庫)
 
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停電の夜に (新潮文庫) (文庫)

ジュンパ ラヒリ (著), Jhumpa Lahiri (原著), 小川 高義 (翻訳)
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (66件のカスタマーレビュー)
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   ジュンパ・ラヒリのデビュー短編集に登場するすべての人物の病を誰かに通訳させるとしたら、この表題作の主人公、カパーシがまさにうってつけの人物といえる。たとえば、「停電の夜に」の若い夫婦、ショーバとシュクマール。2人の結婚生活は子どもが死産したことによって徐々に崩れ落ちていく。あるいは、「セクシー」のミランダ。彼女は既婚男性との何の望みもない情事にはまり込んでいる。しかし、カパーシもまた彼自身の問題を十分抱えこんでいるのだ。

   患者の言葉を理解できない医師のために通訳として働くかたわら、カパーシは旅行者を地元の観光スポットに連れていくタクシー運転手もしている。ある日、彼はインド系アメリカ人1世のダス夫妻とその子どもを車に乗せる。彼らを車で案内しているうちに、カパーシはダス夫人に心魅かれていくことになる。そして、夫人が通訳という彼の仕事の意味を深読みしたことによって、カパーシは不本意にも彼女の秘密を打ち明けられることになる。「私はあなたの才能を見込んで話したのよ」と、驚くべき秘密を漏らした後で夫人は彼に告げる。

    もうずっとこんなひどい気分でいたのにウンザリしちゃったのよ。だって8年よ、カパシーさん、8年も苦しんできたの。あなたなら私の気分をいくらか楽にしてくれるんじゃないかなって、そう思ったの。適当な言葉をかけてくれるとか、なにか療法みたいなものを勧めてくれるとかしてね。

   もちろん、カパーシには、夫人の悩みに対しても、あるいは彼自身に対してもさえ、処方箋を出すことなどできない。

   こうしたほろ苦い結末はラヒリのこの短編集全体を貫く特徴である。9本の短編のうちいくつかはインドを、それ以外はアメリカを舞台に設定しているが、それらのほとんどがインド系の人物に関したものだ。しかし、ラヒリの描きだす人物が直面する状況には、それが不幸な結婚生活であっても内戦であっても、民族性の枠におさまりきらない広がりがある。短編集最後の作品「3度目で最後の大陸」の語り手は次のように述べる。
 「これまで長い道程を旅し、数えきれないほどの食事もし、たくさんの人たちと知り合い、いくつもの部屋で眠りを重ねてきた。人生の歩みと共に積み重ねられてきたこれらのひとつひとつに、私は戸惑いをおぼえることがある」。

   成長を遂げ、家を離れた者、恋に落ち、また破れた者、そしてとりわけ、家族を持ち、その中にいながらも自分を異邦人のように感じてしまう者、そんな誰もが人生のどこかでふと感じることになる不安や戸惑いを、ジュンパ・ラヒリはこの中に見事に要約している。 --このテキストは、 ハードカバー 版に関連付けられています。



Synopsis

A debut collection of short fiction blends elements of Indian traditions with the complexities of American culture in such tales as "A Temporary Matter," in which a young Indian-American couple confronts their grief over the loss of a child, while their Boston neighborhood copes with a nightly blackout. Original. 20,000 first printing. --このテキストは、 ペーパーバック 版に関連付けられています。

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11 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 合わなかった。。。, 2007/10/13
観察力がものすごくて、短編でありながら、その“場”の雰囲気が自分がそこにいるかのように感じられてきます。
ですが、個人的には合わなかったかなと。翻訳の文章にも馴染みがたかった...

一つ一つ、何が起こるわけではない、でもちょっとした出来事にからむ人の心の機微、みたいなものが描かれているのですが、その出来事がとても中途半端に終わっているような、まだ、主人公たちはその出来事のなかにいるのに、その後の方向性もなしに物語が終わってしまうような感じが、どうももどかしくってなりませんでした。
そこがよさの一つなのだと思うので、やはり合わなかったということです。
ですが最後のお話はそういう意味で、中途半端でない印象を持ちました。これにはじんと来ました。

あくまで、個人的な感想です。
どなたかの参考になればと思い、レビューを書きました。
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39 人中、33人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 清楚、静謐、真摯、そして情熱, 2006/12/25
By 郷田庄太郎 (千葉県我孫子市) - レビューをすべて見る
このレビューの引用元: Interpreter of Maladies (ペーパーバック)
以前インドのカルカッタに駐在していたのですが、あちらでは凄い人気の作家さんでした。美人で世界的な作家でかつベンガル人で(インドの一地方です)。同じベンガル人の苗字を持つもう一人の世界的女流作家(しかも美人です)、アルンダティ・ロイさんが私は大好きなのですが、私のあちらでの友人のほとんど全てが「ラヒリの方がいいよ」と(ロイさんが今や「言論の闘士」化していることも一つの理由だと思います)。そのデビュー作である短編集がこれ。
外国で暮らすインド人のことをNon Resident Indian (NRI)と言います。この作品集はそのNRI達が登場するお話です(作者がNRIですからね)。家族の、そして民族の存在根拠が遠く離れたインドにある人々の静かで深い悲哀が、全編の底辺に、いや伏流水のように流れています。それぞれがそういった背景、感覚を知らずとも十分に読める作品なのですが、やはり彼女の作品はそういった背景、感覚を抜きにして語るべきではないのでしょう。
文章そのものや個々の単語、フレーズに関する感覚はアルンダティ・ロイの方が華やかで瑞々しいと思います。ラヒリさんの文章はその点、ちょっとだけ地味かも。ただ、彼女はお話の名手です。短編という表現形式の持てる可能性を最大限に引き出す力は、このジュンパ・ラヒリに軍配を上げるべきなのでしょう。一つ一つ、味わいながら読んで行って欲しいものです。
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16 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 人と人との距離, 2007/1/17
英語圏で暮らすインド人が主人公たちの物語、9編による短編集。
文化の、言葉の、心の「ズレ」の物語。

人と人との距離は、どんな物差しでも均等には測れない。
どんなに近くにいても心が交わらない場合もあれば、大した共通点があるわけでもないのに、ふと理解しあえる場合もある。

まるで精巧な象牙細工のような作品である。
丁寧に磨かれて掘り込まれ、ひやりと冷たく、小さいながらに手にずしりと重い。
ズレが起きたそのわけと悲しみが、どの作品もとても丁寧に描かれている。
中途半端にやさしく終わらないのが、現代的か。

おすすめは「停電の夜に」(光がないからこそ浮き上がる心)、「セクシー」(ロマンティックなシーンがあるぶん、その後がまたなんとも)、「ビルザダさんが食事に来たころ」(哀愁漂うおじさんがいい)。

マジョリティの白人作家では絶対に書けないものが、彼女の作品にはある。
もちろん、インド系の中では彼女はエリートであるわけだから、そこらへんはなんとも言いがたいが。
でもとにかく良いです、おすすめ。
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