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サンクチュアリ (新潮文庫)
 
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サンクチュアリ (新潮文庫) (文庫)

フォークナー (著), William Cuthbert Faulkner (原著), 加島 祥造 (翻訳)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)
ミシシッピー州のジェファスンの町はずれで、車を大木に突っこんでしまった女子大生テンプルと男友達は、助けを求めて廃屋に立ち寄る。そこは、性的不能な男ポパイを首領に、酒を密造している一味の隠れ家であった。女子大生の凌辱事件を発端に異常な殺人事件となって醜悪陰惨な場面が展開する。ノーベル賞作家である著者が“自分として想像しうる最も恐ろしい物語”と語る問題作。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
フォークナー
1897‐1962。米国ミシシッピ州生れ。曾祖父は鉄道建設者・政治家・作家として知られた人物。第1次大戦で英国空軍に参加し、除隊後ミシシッピ大学に入学するが退学、職業を転々とする。地方紙への寄稿から小説を書きはじめ、米国を代表する作家の一人となる。’50年にノーベル文学賞を受賞した

加島 祥造
1923年東京生れ。カリフォルニア大学クレアモント大学院修了。戦後、詩誌「荒地」同人となる。信州大、横浜国大、青山学院短大教授を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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5つ星のうち 5.0 ヨクナパトーファへの継走, 2003/9/24
フォークナーが当初売れるために『自分が想像しうる最も恐ろしい物語』を考え出し作品として上梓したとの告白で、当時物議をかもした『ヨクナパトーファ サーガ』としては第四作目になる長編です。その後初稿の校正刷りを見て『ひどい作品』と彼自身大変な衝撃を受け、他の傑作がこの作品によって貶められることがないように丹念に書き直し、『響きと怒り』などに比べて恥かしくないものにしたと言ってます。何はともあれ34歳の時に刊行された本書によって、それまで無名作家だったフォークナーの名は一躍有名になり事実上の出世作(?)となりました。

確かに他の代表作に比べると深みと言う点においてもう1つのような感じは受けますが、フォークナー独特の空間と時間がスライドのように次々に移り変わって物語を紡いでいく面白さは、中盤以降サスペンスじみた展開によって加速していき、突如現出した対象に襲い掛かる暴力の幻影としての炎、ヨクナパトーファを?々まで静かに照らしだす黒い炎が、玉蜀黍の穂軸のすさまじい哄笑とともに全ての登場人物を乗せてジェファスン上空に吹き上がり、最後に『生命のエネルギーは、生命の原理の否定において最も高い熱度に達する』ともいいたげな、神に背を向けた謎の男ポパイの幻影だけが残る。

このサンクチュアリは特に難解ではなく、長編ですがあっという間に読めてしまいます。本書を読んだあとに同系統の『八月の光』へ行くよりも、『死の床へ横たわりて』あるいは『響きと怒り』などの代表作へ進むことをおすすめします。

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16 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 ……, 2007/2/4
By するめいか (さいたま) - レビューをすべて見る
(TOP 500 REVIEWER)   
 もちろんとっても読みにくい小説でした。暴力的なイメージ、というのが私がフォークナーに対して抱いていた印象です。たしかに陰惨な事件が起こるには起こるのですが、私には前半部のほうがおもしろかったように思います。
 前半の、テンプルが囚われている状況は、ほかのどんなホラー映画なんかよりもおそろしいと思いました。この小説には、あんまり善人がいません。ガウァンの行動にも唖然とするばかり、さらにポパイとテンプル。翻訳がいいのか、フォークナーがすごいのか、私はこのときのテンプルの言動に吐き気がするほどに嫌悪感をいだきました。ポパイではなく、テンプルにです。
 この小説を読んでいると、胸のあたりにものすごいむかつきを覚えるのです。私はあんまりすばやく読みすすめることができませんでした。その不快感はいったい何に由来するのか、嘘や欺瞞を正義をごった煮にしたようなこの小説のなかのいったい何に由来するのか、私にはよくわからないのです。
 それにしても読みにくかったです。
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5 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 いかにして村上春樹ができあがったか, 2008/6/15
いかにして村上春樹ができあがったかを探求しているわけではないが、
ウィリアム・フォークナーの『サンクチュアリ』(加島祥造訳・新潮文庫)を読んだ。
この前友人と話をしているときに、たまたまフォークナーとボウルズの話になり、
私はそのいずれも読んでいなかったので、これを機会に読んでみようと思ったわけだ。
『ノルウェイの森』で主人公のワタナベが読む『八月の光』か短編集でもよかったのに
『サンクチュアリ』を選んだのは、ときどき読書の参考にさせてもらっている「松岡正剛 千夜千冊」 で
フォークナーのこの本を取り上げていたからだ。
(ちなみに「千夜千冊」ではひとりの作家につき一作しか扱わない方針をとっている。)
このアメリカ文学を代表するひとりフォークナーの作品を過去読んだことがなかった。


それにしてもすごい話である。もうどうしようなく陰々滅々たる内容で主人公の弁護士ホレス・ベンホウ
くらいしかまともな人間が登場しないと言ってもいいくらいだ。ほんと救いようがない。
話の舞台は1920年代のアメリカ・ミシシッピー。その田舎の森の中にある廃屋になってしまった屋敷に
密造酒をつくり生活している一味がいる。

こう書いただけで、このアメリカ南部の物語が独特の風土と因習を持つ陰湿なところの話であることがわかる。
そこに生育する植物や鳥、または風景描写そして人物描写に関しては執拗に鋭い描写で迫るフォークナーの筆致。
しかしストーリーに関してはけっして丁寧な書き方をしてはいない。まあ、さほど複雑な話ではないので、
私たちはそのようなフォークナー独自のどこか乾いているようでねっとりとした精密な筆致を楽しんでいけば
よいわけなのだが…

ともかく物語の出だしがすばらしい。森の泉で水を飲んでいたホレス・ベンホウは、
そこに近づいてきた不気味な男ポパイと出会う。ホレスが言う。
「どうやら君のポケットのピストルがあるようだね」「こっちこそききたいぜ。そのポケットには何があるんだい?」
とポパイは逆に問う。「本だよ」「どんな本だ?」「ただ普通の本さ。誰でも読むような普通の本さ。誰でも本を読む
とはかぎらんけれどね」「おめえは本を読むくちなんだな」とポパイは言った。

その後、二人はポパイの屋敷でほんの一時を過ごす。その後に展開される陰惨な物語を予見するようなぞくぞくする
描写が続くオープニングである。
物語のあらすじをあとがきをもとに抜き出そう。
性的不能者のギャング(ポパイ)は17歳の女子学生(テンプル)をトウモロコシの穂軸で強姦し、
仲間の素朴な人間(トミー)を野良犬のように射殺し、テンプルをメンフィスの売春宿に隠し、
彼女を別の青年(レッド)と同衾させてその光景を見つつ興奮し、やがてレッドも撃ち殺してしまう。
(その間にテンプルはアルコール漬け状態である。)最後にポパイは自分の犯さぬ別の殺人容疑から死刑になるが、
死刑の夜も、ともに祈ろうという牧師のすすめを無視して、ベッドに寝ころび煙草をふかしている。
また、トミー殺害とテンプル強姦の容疑をかぶった酒密売人(グッドウィン)は「町」の偏狭な道徳観、
検事の策謀やテンプルの偽証によって有罪となり、さらに町の男たちによって夜中に留置場から引きだされ、
私刑(リンチ)にあう。ー ガソリン缶を負わされ、生きたまま焼き殺されてしまう。

とまあ、どうしようもないこんな話なのだが、この小説にはじつはもうひとつのストーリーがある。
それは弁護士ホレスが保護するグッドウィンの小さな赤ん坊を抱える無垢な妻の物語だ。
この部分が私はとてもいいと思った。この小説の唯一の救いでもある気がする。この小説は、凶悪なギャングたちの
アメリカ南部の陰湿な物語であると同時に無垢な魂を持つ女の物語の側面をもっている。
ただし、フォークナーはドストエフスキーのようにその魂の深淵まで誘っていきはしない。
ただ投げ出すのみである。

これを読み終え、多くの日本の小説家がフォークナーから強い影響を受けていることを思った。
それは大江健三郎であり中上健次であり、最近では『シンセミア』という傑作を書いた阿部和重である。
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