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本格小説〈下〉 (新潮文庫)
 
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本格小説〈下〉 (新潮文庫) (文庫)

水村 美苗 (著)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

生涯の恋に破れ、陰惨なまなざしのままアメリカに渡った東太郎。再び日本に現れた時には大富豪となっていた彼の出現で、よう子の、そして三枝家の、絵のように美しく完結した平穏な日々が少しずつひずんで行く。その様を淡々と語る冨美子との邂逅も、祐介にとってはもはや運命だったような…。数十年にわたる想いが帰結する、悲劇の日。静かで深い感動が心を満たす超恋愛小説。

登録情報

  • 文庫: 540ページ
  • 出版社: 新潮社 (2005/11)
  • ISBN-10: 4101338140
  • ISBN-13: 978-4101338149
  • 発売日: 2005/11
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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5つ星のうち 5.0 二回読んでしまうロマンス, 2006/12/11
冨美子が全てを語り終わり、物語が終わりを迎えるときに初めてこの物語が始まると言えよう。実際に読み手は二回以上読むことを余儀なくされる。どんでん返しが起こるというわけではないのだが、にもかかわらず終盤になって漸く得られる新しい視点で、本作品をもう一度確かめたいという気持ちが生まれる故に二回目を読まずにはいられない。

冨美子の生い立ちから始まる語りは、冨美子の不遇な人生の寂寥感で一杯である。それだけでも胸が塞がり、目頭が熱くなるのだが、メインは太郎についての話であり、その話もまたやるせないものだ。しかしそれを冨美子が語るからこそなんとも言えない気分にさせられることが後々わかってくる。

本作品は恋愛物語であるが、日本の戦後社会が背景になっている。富裕である重光家や三枝家のような名家の持っていた品格は、現在の富裕族である久保やその兄嫁の両家には少しもない。金持ちになった太郎が日本に帰ってきて「こんな国になるとは思っていませんでした」と呟き、さらに日本人が「希薄」になったと評するのが妙に悲しい。

恋愛そのものだけでなく、日本人の品格や恋愛観についても考えさせられるロマンスである。
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5つ星のうち 5.0 恍惚。, 2006/3/28
もし、よう子と東太郎の恋を語るのが冨美子でなかったら、おそらく私は東太郎の事が好きにはなれなかったと思う。
冨美子の語りには愛が満ちている。控えめに語られているけど、その奥に深い、強い愛を感じられる。じんわりと。
よう子の台詞から浮かんでくるタロちゃんよりも、冨美子の目が見た(冨美子が語る)太郎ちゃんのなんと輝かしいことか。(こんな文章をさらっと書いちゃう水村さんは凄い!)
作者の水村さんが作中で似ていると言っている『嵐が丘』も、ヒロイン・キャサリンのメイドが語り手だが、彼女の語るヒースクリフはひたすら野蛮で粗暴なだけで、そこに愛はない。(『嵐が丘』ではそれが重要な役割を果たしているけど・・・)
その冨美子から一歩外れたところで、運命のような恋が繰り広げられるのだ。
冨美子はただ傍観するだけ。三角関係に入ることも出来ない。それを望むことすら望めない。望んでいることすら気付かないふりをしなければならない。
切ない・・・。切なすぎる・・・!!
私にはよう子と東太郎、そして雅之よりも冨美子一人の愛の物語のように思えた。
小説全体に流れる空気も浪漫的でとんでもなく素敵。竹久夢二の絵のよう。日本の美を見た気がする。
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5つ星のうち 5.0 現実と虚構の境目はどこに?, 2008/3/10
さあ下巻と言うわけで、読み始めると、かなり激しくトラップされてしまった。上流階級に入った異質物と周囲のそれに対する反応、歪んだ、しかし、ある意味純粋な愛の形、上流階級の没落、そして、下層出身者の大金持ちになっての帰還。名前に違わぬ「本格小説」というか、一昔前の小説の雰囲気を良く出している。

メインストーリーの部分の語り手の「冨美子」は、全体の狂言回しにもなっていて、話をスムーズに流している。それで居て、最後のチョットしたどんでん返しで、少々傍観的な位置から突然ストーリーの渦中になだれ込むことになる。本書のストーリーは3重に入れ子になっているのだが、一番外側の著者が一番内側の主人公とのつながりを語るし、一番内側の語り手が最後にストーリー自身の意味あいに大きな影響を与える事実が明らかにされるなど、きれいに作った仮想の階層構造に適当な揺らぎがある。この辺の構造も本書を面白くしている。

読んだ後、この話のどこからが虚構なのだろうと考え始めた。もちろん、小説なのだから、話が本当である必要はない。しかし、上巻の半分以上までは著者が私小説的に登場し、「東太郎」を登場させている。そして、著者の所を尋ねてきた「祐介」に、東太郎の子供時代を知る「冨美子」の話を語らせている。この構造が小説全体にリアリティーを与えている。そして、メインストーリーは明らかに彼女が最も好きな『嵐が丘』の強い影響を受けている。もし「東太郎」も「祐介」も全部フィクションだとするとどうだろう。それだけではリアリティーがなさ過ぎて、現代では小説として成立しえない物語を小説として成立させる道具立て全体を著者が構築したということになる。著者が小説家になったからにはどうしてもやりたかった『嵐が丘』を成立させるために。そう考えると、語り手が聞き手に語る動機がかなり薄弱に感じてくる。しかし、全体がフィクションだとしても、大変な構想力と筆力だと思う。

ま、小説なのだから、そんなことはどちらでも良いことで、久しぶりに「本格小説」を味わうことが出来たのは楽しい時間であった。大変お薦め。上巻読了時よりお薦め度アップ。
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投稿日: 2006/8/5 投稿者: life

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