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死の棘 (新潮文庫)
 
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死の棘 (新潮文庫) (文庫)

島尾 敏雄 (著)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

思いやりの深かった妻が、夫の「情事」のために突然神経に異常を来たした。狂気のとりことなって憑かれたように夫の過去をあばきたてる妻、ひたすら詫び、許しを求める夫。日常の平穏な刻は止まり、現実は砕け散る。狂乱の果てに妻はどこへ行くのか?―ぎりぎりまで追いつめられた夫と妻の姿を生々しく描き、夫婦の絆とは何か、愛とは何かを底の底まで見据えた凄絶な人間記録。


著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

島尾 敏雄
1917‐1986。横浜生れ。九大卒。1944年、第18震洋隊(特攻隊)の指揮官として奄美群島加計呂麻島に赴く。’45年8月13日に発動命令が下るが、発進命令がないままに15日の敗戦を迎える。’48年、『単独旅行者』を刊行し、新進作家として注目を集める。以後、私小説的方法によりながらも日本的リアリズムを超えた独自の作風を示す多くの名作を発表。代表作に『死の棘』(日本文学大賞・読売文学賞・芸術選奨)、『魚雷艇学生』(野間文芸賞・川端康成文学賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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5つ星のうち 5.0 「時には傷つけあっても あなたを感じていたい」, 2008/5/29
 夜間高校講師で糊口をしのぐ売文業の夫トシオによる放縦な生活の果て、篤実な妻ミホが
発狂した。
 種々の意味において、狂気というのはしばしばあまりに鋭いもの。一度、妻の発作に火が
つけば、夫の後ろ暗い過去の急所が、執拗にそして的確に抉り出されてしまう。
 そんな狂気に晒される夫もまた、病みへと引きずり込まれずにはいられない。
 塗り替えることのできぬ過去をめぐる責め苛み、夫はひたすらその過ちへの赦しを請い、
妻も一時赦しを与えたかに見せるも、発作の度にそれらはすべて洗い流され、果てなき狂気の
攻防が繰り広げられる。そこにちらつくかつての愛人の影、妻はさらなる闇へと向かう。
「カテイノジジョウ」、不和と呼ぶにはあまりに苛烈な夫婦間のせめぎ合いは、当然に幼い
子供たちを蝕まずにはいない。
 過去の影に支配された一家の壮絶な修羅場は収まることを知らず、それでもなお、夫と妻は
互いにすがらずにはいられない。「私からもぎ取られてしまえば、彼女は生きて行くことが
できないことに気がついた私は、彼女を手放すことはできない」。

 異常といえば、それはあまりに異常な共依存関係。
 しかし、島尾の描き出す狂気の軌跡はすべての人格に象徴的な寓話となる。
「耐えがたい妻の発作も、あわれが先に立ち、ひたすら眠りこむそのすがたに、愛着の湧き
あがるのがおさえられない」。
 誰のことばだったか、愛の対義語は憎悪ではなく無関心、とはまことに至言。
 愛なるものがもしあるのだとすれば、それはすべて互いを傷つけ合う代償としてはじめて
見出される。
 島尾の文体は時に読む側の胃壁をもただれさせんばかりに真に迫ったもの。
 他者を傷つけずには存在しえぬ、この世に生み落とされた人間の不条理をこれでもか、と
生々しく綴ってみせた、問答無用の名作。
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17 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 濃密な戦い, 2006/2/21
夜、夫婦が眠る前の場面で息が詰まる。10年におよぶ夫の裏切りを恨んでやまない妻はその子細を知りながら夫の口からすべてを告白させようとする。愛人たちの氏名や、彼女らに送った金品の金額。寝床での「尋問」は夫を眠らせず、妻自身も眠らない。夫にとって妻の異常を受け入れることは贖罪だが、自棄をおこして自殺や心中に焦がれるときもある。濃密な戦いのなかで神経をすり減らしていく夫婦の姿は、見てはいけないもののようで時にページを繰るのがためらわれた。妻は女の影を「ウニマ」といっておびえ、自身が深い内省に陥ることを「グドゥマ」と言い表す。彼女が生まれ育った鹿児島の離島の方言らしいが、その呪術的な響きは忌まわしく耳に残る。どれだけ相手を傷つけてもどれだけ許しを求めても、苦しみに出口は見えない。その傍らで日々の生活はつづき、子どもたちは育つ。すっかり狂気の世界の住人になれないところに、夫妻の最大の苦悩があるのかもしれない。
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11 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 途中から引き込まれました, 2005/10/2
By カスタマー
解説にも書いてあった通り、延々と続く言い争いの様子に中頃までは食傷気味でした。自分の不貞とそれが原因で起こった妻の奇行をネタにしてるだけじゃないか・・・と。

でも、読み進めていく内にミホさんの気持ち、それをどうにも出来ない著者の様子がありありと伝わってきて引き込まれていました。

多分、世の中にこれと同じような見苦しい男女の争いは沢山あります。そして、それを主題にした小説も沢山あるでしょう。でも、この小説くらい、粘りを持って、ありきたりな修羅場をみつめ、描ききった作品はないのではないかと・・・。

その後、添い遂げられたとどこかで読んで、感慨深かったです。

ここまでではないけど、自分の中にもある狂気が理解出来たような気がしました。

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