タイトルにも登場の照子は岩田春男の妻。春男が復員し、大阪池田市でアメリカ仕込みのパン工場を始めたころから、照子の強烈な個性が発揮される。池田市で初のテレビ喫茶を開き、4人の娘のうち長女にフィギュアスケートの才能があると知るや一流コーチにつかせ、次女にタレント的能力があると判断するや舞台に立たせる。天啓にも似たひらめきと夢を孕んだ上昇志向は、娘たちをやがてオリンピック選手や大スターの地位へ押し上げるに至る。
背景である昭和半ばという時代は、戦争の傷跡を覆ってさらに未来を信じ、豊かさを率直に求めることのできた時代だったのだということが、よく理解される。かたや会話だけでなく地の文にも大阪弁があふれ、そのテンポの良さがストーリー展開の軽快さを促す。そして照子のエネルギッシュさとは裏腹の、穏やかでのほほんとした春男の飄逸(ひょういつ)さが妙に心地よい。惜しむらくは長女次女に比べて下の2人の姉妹の陰が薄く、家族全体のダイナミズムとして描かれなかったことだろう。
岩田家のモデルは、著者なかにし礼の妻の家族。次女は女優のいしだあゆみである。(松平盟子)
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