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燃えつきた地図 (新潮文庫)
 
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燃えつきた地図 (新潮文庫) (文庫)

安部 公房 (著)
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5つ星のうち 5.0 なんだかホッとする作品, 2006/12/1
こういう読み方は正しくないのかもしれないが、憂鬱なときにぱらぱらと読んでいるとなんだかとてもホッとする作品。全体的に非常に重い不安感に包まれているが、それも含めて私にはぴったりくる(変な表現だが)。
 散文詩といったら違うだろうけれども、ともかく筋の捕まえにくい作品だから、ストーリーの面白さを重視する人にはあまりお勧めできない。けれども、この作品の世界の核にいる、静止的、安定的世界を象徴しているような依頼人の女性の魅力。不安から彼女に引きよせられながらも、そこから抜け出して「自分の選んだ世界」を手に入れなければならないと自覚する主人公への共感、等々。とても自分にとって切実なテーマだとかイメージに満たされているような気がして、私は好きだ。
 
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5つ星のうち 5.0 ライナー・マリア・リルケへのオマージュ, 2009/5/18
 ライナー・マリア・リルケ『マルテの手記』
 「人々は生きるためにみんなここへやってくるらしい。しかし僕はむしろ、ここでみんなが死んでゆくとしか思えない」。そんなマルテの書き綴った言葉を思い起こした。
 
 行方不明になることは、逃亡であり、田代が言うように疑似自殺なのだろうか。自殺を選べない卑怯者がやることなのだろうか?いや、「彼」は迷ったのだ。「ここではみんなが迷ってしまう」。ここ、都会という場所では、地図はもはや役に立たない。地図は無効なのだ。無効な地図を片手に、迷い、自分を見失ってしまう。
 
 「ぼく」は、行方不明者の「彼」を追う。追うことができるのは、「ぼく」が迷いながらも、まだ地図の有効性を信じているからなのだが、「彼」を追うことによって、その地図の無効性が露になっていく。地図は燃えつき、「ぼく」は「彼」になる。あるいは、「彼」が「ぼく」になる。たぶん「ぼく」が追っていたのは、「ぼく」自身なのだ。
 
 迷い、自分を見失った「ぼく」=「彼」は、救済者としての「彼女」を拒否する。「彼女」が「地図の外からの使い」ならば、「ぼく」=「彼」を救うことはできない。地図は燃えつきたままだ。「ぼく」=「彼」は、迷い続けるだけのことだ。手探りで地図を描き、「彼女」に辿り着く。それだけが「ぼく」=「彼」の救済の道なのだ。安部は「絶望を語ったわけで」はない。「出発」を語ったのだ、そう私は思う。
 
 安部はリルケからの決別を宣言したが、この小説は、リルケへのオマージュなのだ、そう私は感じたのだった。
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5つ星のうち 5.0 世界的な作家, 2002/6/14
By カスタマー
 おそらく日本の長い歴史の中で、海外でいちばん知られている人は、三島由紀夫と安部公房だと思う。明治天皇や秀吉とか家康の名前を知らないような外国人でも「ミシマ」と「コウボウ・アベ」なら誰もが知っている。

 安部の文学は極めて現代的、むしろ超現代的だと言ってもいい。そういう新しい文学を求めていた人たちが安部文学に傾倒した。もちろん三島文学を好む人にもいろいろなタイプがいる。しかし安部の小説の場合、外国の若い作家でも、「これは新しい」と感じ自分も同じようなことをやろうと思った人がたくさんいた。これは、三島文学の与えた影響とは様々な意味で異なると思う。
 安部の作品についてはとても興味深い現象がある。当時厳しかった冷戦下の東西対立の中、他の日本人作家の作!員は東側世界で読まれるか、それとも西側世界で読まれるかのどちらかになった。しかし、安部の作品だけは、双方で同じ程度読まれていた。安部公房はすでにそういうものを超えていた存在だったのだ。

 安部の作品『砂の女』は世界約三十カ国に翻訳され、フランスで最優秀外国文学賞を受賞した。『他人の顔』『第四寒氷期』なども各国に翻訳された。『燃えつきた地図』はニューヨークタイムスの外国文学ベスト5に選ばれた。まさに安部公房は世界的な作家だったのだ。

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投稿日: 2003/3/3 投稿者: tess

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