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Xへの手紙・私小説論 (新潮文庫)
 
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Xへの手紙・私小説論 (新潮文庫) (文庫)

小林 秀雄 (著)
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5つ星のうち 5.0 まじめにふざけて, 2003/2/18
小林秀雄なんか読む読者はコアな読者なんだろうなと思う今日この頃。私の周りには小林を呼んだなんて人はいません。でもはまる人にははまるだろうし、日本文学かじったらさけては通れないのはこの人。私も危機的状況のとき、この本と出会いました。Xの手紙。生と死が交差する場所にどっぷりと浸かって、逃げ場のない感じがひしひしと伝わってきます。彼の文章は、日本刀のように切れると誰かが評していましたが、その通り。私もその日本刀で斬られて血みどろになってしまいました。「自殺して了った人間というものはあったが、自殺しようと思っている人間とは自体意味をなさぬ」と自らを批評するその切れ味はもはや恐怖!
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1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0 ファン向きの作品集:もっといい文章も書いてるよ, 2009/5/26
 批評家として脂が乗る前の時期の作品集。後年に通じるビジョンや感性を読み取ることは勿論可能だが、それは後年の文章を味わった人だけが可能な楽しみ方である。この文庫に収められた文章の場合、単純に読み物としての完成度や面白さ、フレーズの切れ味はそれ程のものではなく、寧ろ退屈に感じる人も多いだろう。(特に小説や詩はかなり悲惨なデキ。)彼にとって、批評家とはその作品を(「様々な意匠」のフレームを使って)「理解する」ことではなく、ただ「受け取る」「感じる」ことしかできない存在だった。ここに集められた比較的初期の文章はそれを理屈で説明しようと四苦八苦しているのだが、円熟期に入ると「私はこう見た」という味わいの部分をメインで語るようになる。この「こう見た」「こう感じた」の切れ味が素晴らしい批評家だったので、後年の文章の方を初心者にはオススメします。

 とはいえ、敢えて僕が面白いと思った点を挙げると、後年も頻繁に使う「宿命」という論理定義不可能な言葉に初期から拘っていた点。タイトルに反して殆どジイド論の「私小説論」では、個人の体験の切り売りを行う日本の私小説作家を批判してますが、そこでは、その作家が人間として抱く「宿命」のようなものを見せ付けてくれないと私小説は面白くない、と指摘しています。(作家志望だった頃に志賀直哉の影響があったとされるのは、興味深いことです。)戦後になって彼はイデオロギーや政治的言説の薄っぺらさを「政治と文学」で批判してますが、その一方で太平洋戦争期には積極的に戦争支持の言説を発言していました。それも彼にとっては「戦争はやるからには勝たねばならない」という「マキャベリズム」であり「宿命」だったのでしょう。彼の戦争期の言説はもっと吟味されるべきだと思うけど、「私小説論」「政治と文学」「マキャベリ」のように、その頃の彼の考え方を知る補助線になる文章がこの文庫には幾つか入っています。
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5 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 「政治と文学」が秀逸, 2005/8/19
 前半に収められている小林秀雄若き日々の創作集は、小林秀雄のファンにならないと読み通すのがつらいかな。断片的に鮮烈なイメージの提示はあるのだが。ただ、視点をかえると自意識が鋭敏すぎるために、創作の豊かさを断念せざるをえなかった一人の青年が、やがて日本を代表する批評家へとなってゆく過程が、ここに示されていることもたしかだ。

 表題になっている「様々なる意匠」や「Xへの手紙」は必読だが、これも一般の人が読んで、それほど面白いとは思わないだろう。むしろ、マキャベリについてとか、論語をめぐる随想が面白いと思う。なかんずく、「政治と文学」という講演体の文章は秀逸。最近の「この人たちはいったいどこをむいているの?」という政界茶番劇を見させられているだけに、ここで小林が述べている政治についての洞見はすごいと感じることしきりである。たがいに相手の欠点に乗じて自己を主張しようとする言説を思想と呼ぶのはおこがましい!、と小林秀雄が今の政界や国際関係を見てもため息をつくだろう。(私見によれば、この文章の副題は「真の思想とは?」ということである。)政治と文学をめぐっての激動を生きてきた人間の言葉には迫力がある。

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