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ドーン
 
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ドーン (単行本)

by 平野 啓一郎 (著)
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Product Description

内容紹介

最高の純文学にして究極のエンターテインメント! 2033年、人類で初めて火星に降りたった宇宙飛行士・佐野明日人。しかし、宇宙船「DAWN」の中ではある事件が起きていた。世界的英雄・明日人を巻き込む人類を揺るがす秘密とは?


内容(「BOOK」データベースより)

2033年、人類で初めて火星に降り立った宇宙飛行士・佐野明日人。しかし、宇宙船「DAWN」の中ではある事件が起きていた。世界的英雄となった明日人を巻き込む人類史を揺るがす秘密とは?愛はやり直せる。

Product Details

  • 単行本: 493 pages
  • Publisher: 講談社 (2009/7/10)
  • ISBN-10: 4062155109
  • ISBN-13: 978-4062155106
  • Release Date: 2009/7/10
  • Product Dimensions: 7.3 x 5.3 x 1.1 inches
  • Average Customer Review: 4.6 out of 5 stars  See all reviews (18 customer reviews)
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15 of 17 people found the following review helpful:
4.0 out of 5 stars とても政治的な小説, 2009/9/24
まず本書は近未来SFと言うが本当にかなりの「近」未来で、これが現在や明日の出来事であってそう違和感はないというほどだ。実際設定された年代は2033年なのだからそれほど近く感じられるのも当然というものだろう。ブッシュやオバマといった政治家の名前、車椅子になった老齢のスプリングスティーンなど実在の人物も出てくる。勿論宇宙人だとか何かそういう今の日常からかけ離れたものは出てこない。むしろ出てくるのは、どこかで見覚えのあるような激しい主張を繰り返し、正義の戦争やテロとの戦い、愛国心を謳い国民を煽る共和党の大統領と、それに対抗する民主党大統領候補の選挙戦など。非常に多くの部分がこの選挙戦に関するもので、宇宙に関する部分すらもが最終的には政治に絡む、というより政治的な事柄として物語中での役割を果たす。本書を「単純なブッシュ批判」と評する人もいるように、かなりの程度、本書は政治的な小説なのだと考えていい。そういうものへの関心が極度にない人、そういう色のないSFだけを目的とする人にはあまりお薦めできない。それは半ば勿体無い事だとも思うが。

…もう少し踏み込んだ話も。本書では分人思想という著者オリジナル(とはあまり思わないのだが)の思想が出てきて頻繁に言及される。それは簡単に言えば、人の人格は決して一つではなく、一人の人間の中に様々な人格を持った分人が複数存在するのが普通であり、対している人によって振舞いや口調やが変わる、それは何も奇異な事ではなく、むしろそういう形が普通なのだ…といった思想である。(一見キャラという概念に酷似しているが厳密には異なっているなど細かな話もあるのだがそれは置こう。一応簡単に説明すれば、分人=デイヴは、キャラよりも非意図的で自然的な非操作的なものとされている)この分人思想というのはそう真新しいものには思われない。それは平野氏が指摘するまでもなく我々の生活や心に自覚的に根付いているものであり、また少なくない書籍でも既に扱われている問題だから、でもあるし、同じことを平野氏がこれまで何度も言っているから、という意味でもある。だからこそ作中語られる分人思想はかなりすんなりと我々に馴染んでくるし、受け入れやすい。

ただこの概念が本作の設定のように分人思想という思想、ディヴィジュアリズムとかいうイデオロギーのレベルまで引き上げられたのは初である。(著者が予言?するように将来引き上げられる事があるかはお楽しみといった所だ)作中では保守派(右派)と革新派(左派)の政治的抗争も強く描かれているがそこで一貫して右派は分人思想に批判的であり、左派が容認的である事は興味深い。確かにこういう思想や流れが出てこれば右派の人は批判的になるし、左派の人は大体寛容的に振舞う事だろうと思う。また作中では左右両方の熱っぽく長い演説が繰り返し書かれるが、これがかなりの逸品。著者は長ったらしい台詞や演説、議論を書くのが非常に上手いと思う。(癖もあるが)本書の、そして彼の魅力だ。そして困った事に左右両方ともが上手い(笑)。どういう事かというと平野氏本人は作中の展開などから考えてもどちらかといえば左派の方を応援している節があり、右派、本作で言えば共和党のキッチンズは批判対象として書かれているはずなのだがその主張が、演説が、煽りが、立場が異なるとは思えないほどに説得的に熱を込めて見えるのである。では左のネイラーは違うのかというとネイラーも同等かそれ以上だ。小説家とはかくも考え方の全然違う二人の人間を平等に書き分ける事ができ、自分が賛同していない思想すらあそこまで本気っぽく書けるものなのかと感心した。あれほど上手く書いたのでは場合によると本書を読んでキッチンズに説得される人が少しはいても全く不思議ではない。

本書で扱われる政治的なテーマは戦争やテロに限らない。例えばそれは中絶の問題であり、同性愛の問題であり銃規制の問題であり、監視カメラの問題であり、プライバシーの問題であり、厳罰化の問題であり…となかなか広範だ。それは前作の日本とは異なるアメリカの問題かというと違うだろう。その多くはこの日本でも共有される問題だ。著者も随分と社会的な小説を書くようになったものである。とは言え彼は本当に色々な種類の小説を書いているから今後どうなっていくのかは分からない。前作は日本を舞台にした社会派、今度はアメリカを舞台にした社会派、では次は?これは個人的にはかなり気になる事である。今後の著者にも注目したい。
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17 of 20 people found the following review helpful:
5.0 out of 5 stars 現代への明確な処方箋, 2009/8/3
By あたりや55 (東京都葛飾区) - See all my reviews
マネー原理主義者の投機行動がおばちゃんの懐をも直撃する現代社会に対し、文学者の立場から明確な処方箋を提示した記念碑的作品である。
「小説に何ができるか」という普遍的な問いに堂々と答える作者の清々しい表情が目に浮かぶようだ。

作者は前作『決壊』でネットワーク社会の加速によって引き起こされた精神荒廃を完膚なきまでに書き上げた。
本作は自身が"蓋を開けてしまった"絶望へのオトシマエである。
もちろん、あれほど救いようのない現実をこじ開けてしまった彼のこと、上っ面のヒューマニズムでお茶を濁したりはしない。

彼が新たな舞台に選んだのは、『決壊』の時代を起点とする反人間的な科学・経済・国際情勢変化が極限まで進んだ四半世紀後の世界。
人類初の火星有人探査と泥沼化する東アフリカ戦争を背景に、人類史上最も生きづらい時代における米国大統領選の行方を追う。

『決壊』と同様、私は本作にもドストエフスキーの強い影を感じる。
情報に溺れる人々を善悪二元論で誘惑する共和党候補は、徐々にスメルジャコフの様相を呈していく。
その共和党候補に肩入れする戦争加担企業の社長は、スヴィドリガイロフのようだ。
彼らの分かりやすいロジック、悲劇を増殖させるロジックをどう引っくり返すかが本作のキモである。
そこには、人間が人間らしく生き抜いていくための確かなベクトルがある。

それでいて、ポリティカルサスペンスとしても、SFとしても、ボードルームスリラーとしても超一級。
エンターテイメント作家にしてみれば、甚だしい領海侵犯に違いない。
個人的には、『トラフィック』や『シリアナ』といったソダーバーグ系の社会派映画に近いテイストを感じる。
今後、社会派を名乗るすべての作家は、本作をベンチマークに創作に取り組むべきである。

蛇足だが、本作を理解するには、米国の保守とリベラルのニュアンスを頭に叩き込んでおく必要がある。
サブテキストとして渡辺将人氏の『見えないアメリカ』を推薦したい。
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20 of 25 people found the following review helpful:
5.0 out of 5 stars 世界、そして人類の行方を見通す意欲作―, 2009/7/20
本書は、『日蝕』で芥川賞を受賞し、

最近は読書論など幅広い活動を行う著者による長編小説。


舞台は人類が火星に降り立った近未来。

東京大震災で、息子を失った宇宙飛行士を主人公に、

宇宙船クルーに沸き起こったスキャンダル

東アフリカで繰り広げられる戦闘

猛威を振るうなぞのウィルス

そして、白熱するアメリカ大統領選挙―

一見、無関係に思われるそれぞれの事件が

やがて大きなうねりとなり、人類の未来を変える様子を描きます。


物語そのものや入念な人物造形は言うまでもなく、

それにも劣らない本書の大きな魅力は、


領土を持たない国家「プラネット」

個人の人格を分割可能なものと考える分人主義

防犯カメラのネットワーク化と防犯率


―など、現代を考える上でもとても示唆に富む思想や世界観。

これらがスリルと躍動感に満ちたストーリーが相まって

とても読み応えのある作品となっています。


個人的に印象深かったのは、

現実さながら、両候補者による激しい討論や

入念なミーティングがなされる大統領選挙の様子。


選挙終盤には、とても象徴的なある人物まで登場し

思わずニヤリとしてしまいました


夫婦愛、国際政治、社会問題、そして人類の未来―

さまざまなテーマを含みつつも

エンターテイメント性を失わない本作。


著者のファンはもちろんのこと、

一人でも多くの方に読んでいただきたい著作です
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4.0 out of 5 stars いかにもありそうな近未来
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