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我々日本人は、どうやら高校あたりから人を理系・文系と判断する習慣が身についてしまっているようだ。特に会社に入ると、学歴以上に理系・文系の違いが意識されているように感じる。「私は文系だからコンピュータには疎くて…」「理系なもので、微妙な表現は苦手で…」という会話は日常的に聞かれるところだろう。同じ人間であるにも関わらず、ここまで我々の思考を支配する理系・文系の見えない壁。その一方である理系について、リアルな現状と抱える問題を多角的に解説したのが本書である。
「生涯賃金の格差、家1軒分=5000万円」「技官の出世は局長止まり」(「第1章 文系の王国」より)と、ショッキングな事実から始まる本書は、一瞬理系のルサンチマンを連ねた本と錯覚しそうである。青色LEDで一躍話題になった開発者の権利のように、不当な扱いを受けているという事実は確かにあるのだろう。しかしその一方で、社会との接点の薄さや研究データ改ざん等のモラルハザードのような理系特有の問題もある。本書はそれらをえぐりつつ、さらに、理系教育のあり方、増え続ける博士の就職難、女性研究者の抱える問題、研究期間や費用の問題などの理系の現状をリアルに伝え、あるべき理系の未来像を描き出していく。章末の「課題を聞く」では、田中耕一さんら理系の第一人者たちに各章のテーマをぶつけている。
本書で言う「理系」は主に研究者を指しており、章によってその定義も若干揺らいでいるように感じる。それは逆に言えば、「理系」のステレオタイプが研究者の姿にあることの証拠でもある。理系として生きてきた人には共感を得つつ現実を見つめ直すため、これから理系として生きていこうとしている人には自らへの課題を明確にしていくための指標となるだろう。(大脇太一)
日経BP企画
理系白書 日本の驚異的な経済成長は、理系の科学者・技術者によって支えられてきた。にもかかわらず、理系人の待遇はそれにふさわしいものとは言えない。本書は、産・学への取材や種々の統計を通じて、理系人の実態を明らかにしようとしたもの。昨年1月から本年4月まで毎日新聞科学面に連載された記事を再構成している。
まず、日本社会は理系人を「黒衣」として利用し、時に無視してきたと指摘する。多くの企業を取り仕切るのが文系人であることは周知の事実だが、霞が関の官僚社会にさえ「技官の出世は局長止まり」という不文律が存在していると言う。また、ある国立大学では文系学部出身者との生涯賃金の格差が最大5000万円になり得るという調査結果を示す。
その一方で、米国を模範とする新たな動きを示す。「奴隷はもうごめん」というのが理系人の心の叫びであり、自らの発見や発明に関して「相当の対価」を求める理系社員の「職業発明訴訟」が増加している現状や、先進的企業の「報奨金制度」を紹介する。また、「大学研究室発ベンチャー」の現場で、「巨額の国費を投じて得た知財をため込むのではなく社会に還元することで大学は生き残る」という士気が芽生えつつあるとリポートする。
(日経ビジネス 2003/07/21 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)