著者は世界各地を巡って、温暖化や廃棄物問題の深刻な実態を生々しく伝える。その行動範囲は実に広い。
温暖化によって氷河が解けて発見されたミイラ「アイスマン」を見るためにイタリア・ボルツァノー市の博物館に出かけ、さらにヘリコプターで標高3210mの現場へ飛ぶ。そこで、アイスマン発見時にあったはずの氷河が痕跡もなく消えている光景を目の当たりにする。
深海の生物世界を見ようと静岡県近海で潜水調査船に乗り込んだ時には、海底でレジ袋や空き缶などのゴミを発見する。30余年通い続けているアマゾンでは、森林伐採や牧場開発が進み、訪問を重ねる度に、大自然に浸るのに必要な移動距離が増えているという。
机上で計算したデータなどでなく、実際に著者が現場に立ち、見たり、聞いたり感じた情報だけに、地球環境の深刻さがストレートに伝わってくる。
「ファンタジー」が潮流変える
一方、本書は世界各地で動き始めた「環業革命」も紹介し、将来に希望を持ち得る内容としている。
エコタウンの実現を目指す北九州市では、従来のスクラップ工場とは全く違う「モノ壊し」と「モノ戻し」に挑戦する使用済み自動車のリサイクル工場が稼働している。太陽エネルギー利用に熱心に取り組むドイツの古都フライブルク市では、市営のサッカー場の観客席屋上に太陽光発電パネルを搭載し、試合がない日でも電気を生み出している。
いずれも、最新のアイデアや試みが実践される背景には、望ましい未来を描き、情熱を持ってプロジェクトを強く推進する人物、本書の表現では「ファンタジー」ある人物がいることが興味深い。
環境問題はあまりにも大きく、「自分では何ともならない」という無力感に陥りがちだ。だが、実は自治体でも企業でも地域社会でも、個人のアイデアと情熱と行動力が、潮流を変えるパワーになり得る。人任せ、国任せにせず、一人ひとりが「ファンタジー」を描くことが環業革命の第一歩なのだと感じさせられる。
(日経エコロジー 2005/09/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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