出版社/著者からの内容紹介
<私たち裁判官がこの「奇妙な」本を出版する動機は、日本の司法の体質を、日本社会の転換期のいまなんとか変えてみたいという一点にある。正直言って、(中略)閉鎖的な体質は、司法やそれを構成する裁判官の体質として現に存在している。別に内部告発をしようと思っているわけではないが、裁判官が本音で社会に対して発言している場面は滅多にないであろう。(中略)ごく当たり前のことなのだが、裁判官は決して特別な人たちではない。家族や生活のことで、人並みに泣いたり笑ったりする。仕事が忙しすぎるとか、自分に対する処遇が十分でないとかの愚痴を言い、赤提灯で役付裁判官の悪口を言ってくだを巻くのは世のサラリーマンと全く同じである>(「まえがき」より)
カバーの版画に描かれているのは、ギリシャ神話に登場する裁判の女神「ディーケー」。右手には勇気の象徴である剣、左手には正義の秤を持ち、自分の良心にのみ従うため目隠しをしている。裁判とは本来、多数決の力ではなく裁判官個人の理性によるべきであることを、この女神は表している。
内容(「BOOK」データベースより)
本書は現役の裁判官が判例評釈や学術論文を除けば、広く一般に向け、自ら名乗って自分の仕事、生活、さらには現在の裁判所にとっての課題を、時には批評もまじえて綴ったおそらくは初めての一冊である。弁護士は本をたくさん出版している。著書を持つ検事も少なくなかった。なのになぜ裁判官の著作がほとんどないのか。国民が裁判所、裁判官に興味がなかったからではないだろう。『家畜人ヤプー』の著者が裁判官と信じられているように、文章の得意な人がいなかったわけでもない。意見表明がはばかられる雰囲気が裁判所という職場、裁判官という仕事にこれまであったことは、各判事の文章をお読みいただければ理解できるであろう。