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「満開の桜に、やわらかな陽射し。やさしい1日だった…」。先天性四肢切断という「超個性的な姿で誕生」した日を、著者はそんな言葉で描写している。そして「生まれてきただけでビックリされるなんて、桃太郎とボクくらいのものだろう」という感想を書きつけた後で、1ヵ月後に行われた母との対面の様子を紹介する。そのとき母は単純に「かわいい」と言ったのだと――。
一見客観的な文体でつづられたこの「まえがき」は、ある意味で「神話」である。生後1ヵ月の子に確実な記憶などあるはずはないし、周囲にも何らかの単純化の配慮があったことが、容易にわかるからだ。
しかし、周囲の事情は問題ではない。大事なのは、「神話」によって培われた著者の強い自己肯定感覚の力である。「靴の代わりに車椅子に乗る」と言い、障害を個性としてとらえてやまない著者の芯の強さは、この自己肯定感覚なしには考えられないからだ。
本書につづられた著者のアイデンティティー獲得を巡る格闘は、明るく感動的で説得力に満ちている。障害は個性だという主張にも、多くの読者に受け入れられる普遍性があると思う(若者は、誰でも障害者と自己認識しているという言い方だって可能なのだから)。
しかし、と考える。「かわいい」と言ってくれない両親がいなかったらどうなるのか。世の中には、むしろそんな人の方が多いのではないのかと。この問題の解決は、むろん著者の課題ではないにしても。(今野哲男)
メタローグ
すでに420万部以上売れたこの本、TV等マスコミの紹介も多く、中身は余りに知られているので、ここではなぜ売れたかを表層的に分析したい。まず、担当編集者の熱意。講談社は毎月、大型書店と販売会議を開いているのだが、その場に担当編集者が出張し、書店員にこの本の良さを説きまくった。同時にマスコミへの働きかけ。TV等の放映と書店店頭にどかっと積まれた本、二つの強力なスクラム効果。さらに、読みやすさ。「少年H」程ではないが、本書にはルビが多用されている。普段活字なぞ読みもしない人が、店頭で立ち読みしたとき、これなら俺でも読めるよ、と思わせる効果。ベストセラーは偶然や成り行きで生れるものではない。(守屋淳)
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