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疾走 上 (角川文庫)
 
 

疾走 上 (角川文庫) (文庫)

by 重松 清 (著)
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Product Description

出版社 / 著者からの内容紹介

引きこもり、家庭内暴力、放火、借金、一家離散……。14歳の少年・シュウジが背負った余りに苛烈な運命。今秋、映画公開が決定した、直木賞作家、畢生の衝撃作、待望の文庫化!


内容(「BOOK」データベースより)

広大な干拓地と水平線が広がる町に暮す中学生のシュウジは、寡黙な父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。教会に顔を出しながら陸上に励むシュウジ。が、町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、優秀だったはずの兄が犯したある犯罪をきっかけに、シュウジ一家はたちまち苦難の道へと追い込まれる…。十五歳の少年が背負った苛烈な運命を描いて、各紙誌で絶賛された、奇跡の衝撃作、堂々の文庫化。

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21 of 21 people found the following review helpful:
5.0 out of 5 stars 「ひとり」「ふたり」「ひとつ」が踊り、うねる。, 2008/12/12
家族、人と人とのつながりを一貫して書いてきた重松清が、
おそらく初めてそのすべてを断ち切った小説。この小説には一切の救いが、ない。

この小説は煉獄の人生を生きた15歳の少年の地獄の数年間を追った物語。
重々しく二人称で語られる体裁自体が重松作品の中では非常に異質で、発表時に騒然となったらしい。実際に読んでみて、問題作かつ衝撃作で各誌で絶賛されたのがよく分かる。
主人公は優秀な兄を持っていた。が、その兄がその集落で殺人を犯すよりも重い罪をおかしたことにより、歯車は狂いだす。家庭は荒れ、学校では極度ないやがらせにあい、親父は失踪し、母も壊れる。主人公は生きたい、それだけのために一人で大阪、東京へと故郷を出る。文庫本の裏表紙にある<孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人>という言葉の列挙がそのまま作品の内容だ。

普段の彼の作品ならば必ず「救い」は用意されている。もちろん安っぽい問題解決なんかはしない。けれども、作品の最後には何らかの、ほんとスイッチが入れ替わるだけのことだけど、それが一番の、救いが用意されている。今回はその一切を拒絶している。
突き放すように「おまえ」と語りかける様は異様で、何らかの作者の決意を意図しているようにも思える。クライマックスの間際に、語り部が誰にともなく弁解のように<わたしは、おまえの物語を語り続けてきた。おまえを救うためではなく、おまえを幸せに包み込むためではなく、だからわたしは、ひどく冷たい語り部なのだろう。>と付け足したように書かれている。ここが僕にとって印象的だった。なぜならここで著者は今までの著者自身に背を向けたから。

読めば分かる。そして、同時にこの作品から「重松清」を知ってほしくないとも、思う。

重松清は直木賞を受賞した時に自分で自分を分析していたのが印象的だった。「僕は文学を書けない」的なことを言っていて、その理由は「ひとり」になれない人間だから、と。「文学」とは孤独で「ひとり」の人間が共同体からはぐれて、それでも自分を表現することによって自分の存在確認、存在証明をすることによって生まれるものだと。いつも分岐点で一般人との最大公約数を選んできた自分には無理だ、とも同時に言っていたのだ。
また、「文学の資格」についても人一倍考えている人だ。自分にその資格がない以上、文学への畏怖とそれを書ける人への畏敬の念が強いらしく、自分を絶対に文学者とは軽々しく名乗らない。そして、やはり中上健次を別格のように尊敬している。早稲田文学時代に世話になったというだけではない「何か」を中上に与えられ、求められたのだとエッセイの数々を見れば気付く。そして中上文学を愛している人ならば「疾走」が重松清の中上健次へのオマージュであり、「挑戦」だということに気付く。そして、その挑戦は勝ったかどうかは僕には評価できないけれど、決して負けていない。見事に戦い抜いている。「ひとり」に苦しんで誰かと「ひとつ」になりたい孤独な主人公を最後まで描いている。

繰り返し、繰り返し、物語の中で「ひとり」「ふたり」「ひとつ」という言葉は踊り、うねる。

この作品は徹底した救いのない物語で、ここまでの覚悟で書いたからには安易な救いなんかは書いてほしくなかった。だから、物語の終着点はすごく満足だったし、目頭があつくなった。救いはなくても望みはあるんだな、と思えるものだった。

僕はひさしぶりに小説を「取り憑かれたよう」に読んだ。おそらく作者も「取り憑かれたよう」に小説を書いたんじゃないだろうか。「疾走」というタイトルは走ることに特別なものを感じ、生き抜こうとし、クライマックスでも文字通り駆け抜けた主人公を意味しているだけではなく、それを図らずと意味しているんじゃないかと思う。

最後まで自分勝手な書評だなと思うけれど、僕のように「ひとり」で生きられずに最大公約数を選んできた者の言葉などこんなものだと分かっている。それでも良いと思って書いている。
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14 of 15 people found the following review helpful:
5.0 out of 5 stars 心にたくさんのガラスが突き刺さる, 2006/4/26

ものすごい小説だった。
内容の全てを受け入れきれてない自分がいる。

生きるとはナンダロウ??


人間は弱くて一人だ。
しかし、一人ぼっちではない。
自分のことを想ってくれる、家族がいて、友人がいて、恋人がいる。
あたりまえに思っていたが、ものすごく大切なものだと改めて考えさせられた。

人とつながることが煩わしく感じられる昨今の世の中だが、果たしてそうなのだろうか?
この本を読めばそんなことはないと考えせられるだろう。

重松さんの作品の中で一番好きだ。
この作品を読むと本当にたくさんのことを感じ、考えさせられる。
ぜひ、あなたにも感じて欲しい。

私は、絶望ではなく、光に包まれて生きていきたい。


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21 of 23 people found the following review helpful:
5.0 out of 5 stars 思春期の子を持つ親に読んでほしい, 2006/2/26
なぜおまえは疾走しなければならないのか?なぜ、そんなに生き急がなければならないのか?じわじわと壊れていく家庭に、何もできず、目をそむけるだけの無責任な親。壊れていく家庭のアリ地獄の中でなんとか生き延びようと、もろい砂にしがみつく主人公のシュウジ。
正直言って、悲しくて、どうしようもなくつらい作品だった。けれど、ページをめくる手を止められず、一気に読んだ。「誰か、いっしょに生きてくれませんか?」これは、思春期の子供たちの悲鳴のように聞こえた。誰か、堕ちてゆくシュウジを救ってやれなかったのか?まわりの大人は手を差し伸べてやれなかったのか?(特に、「おまえ」と呼びかけ続ける神父の無力さが私には歯がゆくてたまらなかった)
未成年の悲しい事件が頻発する現代社会において、本作はフィクションでありながら、フィクションとして見過ごすことのできない、胸に迫る切実なものがあった。
私は、読みながら、白夜行のリョウジとユキホをふと思い出したが、彼らの内面は(小説の中では)よく見えなかったのに対し、シュウジの思いは手に取るようにわかる。それだけに、よけい悲しい。

主人公は中学生だが、中学生に読んでほしいかどうかは微妙。むしろ、中学生を持つ親には、ぜひぜひ読んでもらいたいと私は思った。
彼らの鬱々とした思い、苦しみ、葛藤、あたりまえの性衝動を少しでも理解してもらえるように。
重松清はスゴイと唸らせる作品だった。
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