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夢果つる街 (角川文庫)
 
 

夢果つる街 (角川文庫) (文庫)

トレヴェニアン (著), 北村 太郎 (翻訳)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

吹き溜まりの街、ザ・メイン。いろんな人間たちが破れた夢を抱えて生きている。ラポワント警部補は毎日パトロールを欠かさない。ここは彼の街であり、彼が街の“法律”なのだ。そしてラポワントにも潰えた夢があった…。それは奇妙な死体だった。胸を一突きされて、祈るような格好で路地にうずくまっていた。イタリア系らしい若い男だった。街を知りつくしたラポワントは、難なく最初の手がかりをつかんだ。だがやがて浮かびあがるのはまったく意外な犯人、そしてそこにも街の悲しい過去があるのだった―。

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5つ星のうち 4.0 街を主人公にした情感溢れる傑作, 2006/8/12
By 紫陽花 "玲瓏" (神奈川県相模原市) - レビューをすべて見る
(TOP 50 REVIEWER)   
邦題も良い題で作品の情感を出しているが、原題は「ザ・メイン」。メイン・ストリートのメインで作品中ではある特定地区を指している。ラポワント警部補はそこを何十年と見回ってきた、いわばメインの主。メインでは浮浪者から豊裕層まで様々な階層の人々が懸命に生きている。主人公が刑事となれば犯罪はつきもので、1つの殺人事件が一応軸になってはいるのだが、その解決が話の骨子ではない。街に生きる様々な人々の生き様をラポワントの目を通して描くことが主眼であり、それは成功していると思う。ラポワントは全ての人々を平等に温かい目で見守り、そんな彼をメインの人々は尊敬している。

そんなラポワントの個人的生活として、彼のところに飛び込む若い女性が作品に彩りとアクセントを与えている。また、後半登場してある役回りを果たす、今は成功した魅力的女性実業家が実は幼い頃からのラポワントの崇拝者だったという設定は深い印象を残す。このように人物造詣が非常に巧みである。

先の事件は静かな解決を迎える。犯人とラポワントの関係を考えれば淡々とし過ぎる程に。そして、メインにはいつもと変わらぬ明日がやって来るのだ。街を主人公にした情感溢れる傑作である。
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7 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 静かな悲哀の街, 2005/8/17
By stanly (千葉県 Japan) - レビューをすべて見る
 読者を引き込む力のある、よくできた小説です。ジャンル分けすると警察捜査小説に当たりますが、この作品では良くも悪くも事件はほとんど重要ではなく、全体の底流にある静かな悲哀がこの小説の形を作っています。
 この小説の舞台となるザ・メインは確かに“夢果つる街”ではあるのですが、それは「赤い収穫」のポイズンヴィルのような街では決してなく、汚いながらも人々の喜びと哀しみが溢れる愛すべき街、愛すべきながらも夢は果て、やがては崩れゆく街として描かれています。この小説を取り巻いているのはあくまで諦めのこもった静かな悲哀なのです。

 また、この小説で重要であり見事でもあるのは登場人物の造形です。主人公のラポワント警部補はザ・メインを独自のやり方で治め、街の法の象徴ですらある警官であるものの、過去の喪失と悲しみを乗り越える勇気を出せなかった人物。それと対比させるように描かれているのが、大学卒の新人刑事でラポワントの考えや行動に共感できないガットマンです。
 この新しい世代と古い世代を対比させる関係は、物語では珍しくもなんともないのですが、読んでみるとこれがただの世代の違いだけによるものでないことがわかるでしょう。この登場人物たちのドラマにもやはり象徴的な諦観と悲哀、そしてある種の希望が存在します。

 読んでいる途中は面白くて気づきませんでしたが、これはミステリとして読んだらお粗末な出来です。真相につながる伏線はほとんどないし、それどころか事件に存在感と魅力すらありません。しかしもちろん、それでいいのです。この小説の魅力は先に述べた雰囲気であり、それを生み出す美しい文章や随所に織り込まれた本筋でない魅力的なサブ・ストーリーなどで、求められるものは見事に満たしていました。ラストの事件解決後の感慨をもらすラポワントとザ・メインの姿が心に残ります。

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12 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 いぶし銀の警察小説, 2001/12/15
By ピエロ (会津) - レビューをすべて見る
(TOP 500 REVIEWER)   
この小説の主人公は二人(一人と一つ)いる。

一人はモントリオール市警の刑事ラポワント警部補。50歳代で、妻を若くして亡くしてその後は独身、動脈瘤という爆弾をかかえながらも、相棒のガットマン刑事と捜査に歩く。このガットマンは新人で進歩的な考えを持った若者、ラポワントは何かにつけて反発を覚えるが、一方では自分の年齢を思いため息をつく。このため息がとても印象的で、男の誇り・哀しみ・あきらめがこもっていて読者の胸を打つ。
もう一つの主人公は、ラポワントが担当するモントリオールの一地区「ザ・メイン」。この夢の破れた者たちが集まる吹き溜りの街の様子・自然・暮らす人々を細かなところまで丁寧に描いていて、これまた印象的。

この灰色の街・夢果つる街ザ・メインでおこした殺人事件を、おさえられた筆致で淡々と描いていく、一見地味だがいぶし銀といった感じの警察小説の傑作です。

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