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タイ 中進国の模索 (岩波新書)
 
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タイ 中進国の模索 (岩波新書) (新書)

末廣 昭 (著)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

一九九〇年代以降、経済の飛躍的拡大、消費社会の到来、少子高齢化の進展など激変を遂げたタイ。「中進国」となったこの国は、どこへ向かおうとしているのか。タックシン体制をリセットする二〇〇六年クーデタ後つづく政治の動揺の着地点は?民主主義と王制との調和、グローバル化への対応に揺れる社会の実像を鮮やかに描く。


著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

末廣 昭
1951年鳥取県に生まれる。1976年東京大学大学院経済学研究科修了、同年より87年までアジア経済研究所でタイ経済研究を担当。1981年から2年半、同所海外派遣員としてタイ国チュラーロンコン大学に滞在。大阪市立大学を経て、東京大学社会科学研究所教授。経済学博士。日本タイ学会会長。専攻はタイ経済史、アジア経済論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 新書: 247ページ
  • 出版社: 岩波書店 (2009/08)
  • ISBN-10: 4004312019
  • ISBN-13: 978-4004312017
  • 発売日: 2009/08
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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5つ星のうち 5.0 "微笑みを失いつつある"中進国タイ−急激な経済発展による社会変化に追いつかない政治状況の背景とは, 2009/8/23

 著者による16年前に出版された名著 『タイ−開発と民主主義−』(岩波新書、1993)の続編として、満を持して登場した本書は、現在のタイを、政治・経済・社会から捉えるために不可欠な知識と視点を与えてくれる。読者は充実した読後感を得ることであろう。

 前著の出版は、1992年の第二次民主化運動のさなかでで発生した「五月流血事件」によって、報道をつうじてタイが全世界にクローズアップされたあとのことでであった。
 今回の新著は、もはやあるまい思われていたが2006年に15年ぶりに発生した「無血クーデター」から3年たったいまでも、いっこうに政治的混乱に終止符がうたれないタイの現状について詳細に分析している。
 この二冊の本のあいだに存在する16年間とは、まさにタイが中進国として急激に経済発展し、様々な社会問題を発生させてきた時期でもある。
 著者はタイ現代史の分岐点となった1988年から筆を起こすことによって、この20年間でタイが"微笑みの国"から、"微笑みを失いつつある国"へと変化してきたことを解説、現在まで続く政治的混乱の原因は何かについての見取り図を読者に与えてくれる。

 タイにかんする本といえば、専門書を別にすれば、ほとんど同じ内容の観光ガイドブックばかりが出版される昨今の日本の出版状況だが、本書は久々に登場した、日本語で読める本格的な一般書である。観光地としてのタイではなく、現代のタイ社会について、根本から理解するための必読書といってよい。
 著者がカバーする領域はかなり広く、経済・政治・社会だけでなく、新興財閥の具体的な企業名もあげて言及しており、ビジネスマンにも読むに値する内容の本になっている。
 著者による 『進化する多国籍企業−いまアジアで何が起きているのか?』(岩波書店、2003)とあわせて読めば、1997年のアジア金融危機後IMF管理下におかれたタイのビジネスの変化、消費社会化した現在のタイについて深く理解できるだろう。

 本書を読むと、中進国となった工業国タイの問題とは、米国が主導するグローバル資本主義にいかに対応するかという課題に対する、二つの解答のあいだのせめぎ合いであると見ることもできる。
 ひとつは、1997年の金融危機以後、タイの政治では例外的な、5年以上にわたる長期政権を実現したタクシン元首相の、積極的にアングロサクソン流のグローバル資本主義の流れに乗っていこうとした経済・社会政策。
 もうひとつは、現国王ラーマ9世(=プーミポン国王)が提唱する「足るを知る経済」。後者は、仏教の経済思想に立脚したサステイナブル経済を志向する、いわばオルタナティブ資本主義といえる。
 タクシンが積極的に推進した変革は、ある意味でタイを日本以上にアメリカナイズされた社会に変貌させた。これは、ビジネスでタイにかかわり、バンコクに住んでいた私にはよく実感できることである。
 しかし、タクシンが実行した経済社会改革があまりにも急進的であったために、タイ国民は正直いって疲れてしまったというのが実情だろう。これが2006年クーデターが国民に受け入れられた背景にあるようだ。
 日本の小泉首相とほぼ同時期(!)に政権の座にあったタクシンがもたらしたものは、日本と同様、功罪両面から評価しなければ本当のことは理解できないのだ。

 "微笑みの国"というのは、有名なタイの観光キャッチフレーズだが、実際にタイに暮らしていると、タイ人から"微笑みが失なわれつつある"ことを日々実感することになる。微笑みはいったいどこに行ってしまったのだ、と。
 日本を上回るスピードで急速に変化をとげているタイ社会には、先進国日本がすでに経験ずみの問題もあれば、少子高齢化というまさにいま直面している問題もある。またタイ固有の問題もあり、先進国日本の経験で、中進国タイが抱える問題のすべてを推し量ることはできないのだ。

 著者は最終章で、「タイ社会と王制の未来」について扱っている。これは、タイの将来を考える上で避けて通ることができない最重要のテーマである。
 しかし、タイについて多少でも知っている人は承知していると思うが、これは正直いって実に扱いにくいテーマなのだ。私は、このテーマを項目として立てたこと自体、著者を高く評価したいと思う。
 しかしそうはいっても、読者はこの章にかんしては、行間を読む必要に迫られる。だが、最初から最後まで注意深く本書を読んだ読書なら、今後の方向性についてはかなりの見通しをを得ることができるはずだ。
  
 トリビアルなものまで含めて、タイにかんする知識がぎっしりつ詰め込まれた本書は、一回読んだあと読み捨てにするには実に惜しい。
 ぜひ1冊購入して、読んだあとも手元に置いて、折に触れて参照する価値のある本である。
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4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 「強い国王」と「強い首相」の衝突, 2009/9/11
By 革命人士 - レビューをすべて見る
(TOP 500 REVIEWER)   
タイの最近20年の歴史を、経済成長のマイナス面を軸に振り返る。特にタクシン政権について、「すべての政府部門トップはCEO」という、企業並みにスピード重視の統治スタイルを詳細に分析している。「国民の父」として国民と直接対話するスタイルのタクシンはもう一人の「国民の父」ラーマ9世国王と並び立つことになる。タクシン自身の独裁的統治、金銭欲、身内主義以上に「強い首相」の存在を「強い国王」を奉じる人たちが容認できなかった、というのが、昨年のタイクーデターの背景なのか、ということを感じた。

経済成長につれ、人々のあいさつが「サバーイ(気持ちいい)ですか」から「忙しいですか」に変わったと、タイ社会の繊細な変化を著者は指摘する。終章で著者はタイ・アイデンティティに基づく国王の経済政策、伝統を変革するタクシン的な経済政策という2つの路線対立があるという。著者は結局、折衷的な路線しか取り得ないし、臨機応変なタイ人のことだから、またそうするであろう、という。

現地取材と多数の数値・図版資料で、タイを政経社から多角的に分析し、読み応えのある本だった。グローバリズムに悩むのはどこも同じなのだろう。
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5 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 「経済発展」するのもラクではない, 2009/9/9
By 馬場伸一 (福岡県) - レビューをすべて見る
(TOP 500 REVIEWER)   
「タイという国の今」を知るために好個の本。
特にタクシン元首相をめぐる現在の政治的混乱が「なんか分かりにくいなぁ」と思っておられる方は、本書を読まれるとよい。評者もおかげで「スッキリと分かった」クチである。

さてそれにしても、「経済発展」するのもラクではない、ということが本書を読むと実によくわかる。
タイはグローバル化によって国境を超えた投資がスムーズに行えるようになって発展した国である。昔だったら餓死者を出すほどに自国民を絞り上げて「資本の原始的蓄積」を行わないと工業国へ「離陸」できなかったのが、今では外資を受け入れることで容易に工業化できるようになった。中国をはじめ、東南アジア諸国はそうやってテイクオフした。(今やタイからの輸出額1位はコメではなく工業製品である。)

しかし「圧縮された近代化」を達成したタイには、様々な社会問題も「圧縮されて」訪れることになる。
タイにおける疾病対策はその典型である。タイでは、エイズを含む感染症の脅威がまだ深刻だ。これは途上国型問題である。経済発展によって糖尿病等の生活習慣病が激増した。これは中進国型問題である。さらに、寿命の延びに伴う慢性疾患が増え、その対策も急務だ。これは先進国型問題である。すなわち、先進国が順次「卒業」してきた問題群が一斉に押し寄せているのだ。経済発展段階を「駆け抜けた」ことにより、それに伴う弊害も一斉に押し寄せる。タイ国政府の保健医療担当部門の苦労たるや、大変なものであろう。

タクシン元首相という人は、こんなふうに「経済発展疲れ」している国民に対して「さらにもっとグローバル化せよ」「もっと欧米化しなきゃダメだ」と叱咤激励し過激な「現代化」を強行したあげく、放逐されたということらしい。小泉改革をさらに過激にして、さらに短期間に実施したのだと考えると、タイ国民がタクシン改革にうんざりした気分がよく分かるというものである。

タイの経験は、同様に経済発展段階を「駆け抜け」つつある中国の今後を考える上でも非常に参考になると思われる。
「今後のアジア」を考えていく上で、ぜひ読んでおきたい本である。
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