本書は2000年に出版された「The Second Creation」の邦訳。クローン技術にまつわる話題のすべてを網羅したといえるほど内容は詳細だ。細胞生物学の観点から見たクローン技術の課題や、人間が享受できる利益、あるいはクローン人間への可能性など、当事者ならではの視点でクローン技術を解説する。
科学ライターであるコリン・タッジが、「ドリー」の産みの親、イアン・ウィルマットとキース・キャンベル両氏にインタビューしてまとめた。そのため、本書は両氏の肉声を聴き、体細胞クローン技術の開発に成功するまでの舞台裏をうかがい知ることのできる数少ない書であるといえる。
興味深いのはドリー誕生後、一部に起こったという「ドリーは本物か」という議論だ。ドリー誕生の重要性は、分化した成体の細胞から産まれたという点にある。しかしウィルマットらが自ら認めるように、ドリーを作るために用いた培養乳腺細胞の中には、比較的未分化の細胞、いわゆる幹細胞が混じっていた可能性が否定できない。つまり、分化した細胞から誕生したわけではないのではないかというのが論点だ。
この議論についてウィルマットは「もしドリーが幹細胞からできたとすると、彼女の栄光にはやや傷が付く」と述べ、完全に疑念を否定していない。ただし「成体には多くの幹細胞が含まれている。実用的な観点から言えば、成体の細胞からクローンが作り出せることに何ら変わりがない」と、研究の重要性には影響しないことを付け加える。
内容は専門性が高い部分もあるが、専門家でなくとも画期的技術の誕生を臨場感たっぷりに感じることができる一冊だ。
(日経バイオビジネス 2002/06/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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