ヴィラ=ロボスの音楽の特徴は、ラテンのパッションと、節度(形式感、上品さ、など)がバランスをとって同居しているところである。そして、彼の音楽のエッセンスを3つ挙げると、ブラジルの伝統音楽、フランス近代音楽、そしてバッハの音楽である。早い話が、ブラジル伝統音楽と西洋クラッシック音楽との融合、フュージョンなのであるが、水と油に近いこの2つの音楽を結び合わせることが出来たのは、彼がバッハという古典を研究尽くして、クラシック音楽の本質を自分の血と肉としたことのおかげである。また彼はフランスに遊学した。それは当時の最先端の音楽を学ぶためであったけれども、フランス文化を学ぶことで身についた仕上がりの良さは、彼の作品が多くの聴衆に受け入れられる要因になったのではなかろうか。すなわち、彼の音楽を例えると、ウィスキーの水割りである。もともとはすごく濃いのだけれども、水で薄めることでお酒の弱い人もみんな楽しめる、という感じではなかろうか。ちなみに、これは彼の作曲法にも当てはまる。というのも、彼は非常に多作家だからである。多作なので、水割りの加減にもいろいろあり、濃すぎたり、薄かったりというわけで多少出来不出来がある。しかし、このCDに収められている作品は代表作ばかりで、彼の作品の中でも完成度の高いものばかりが集められている。『ブラジル風バッハ』第3番のピアノ、『幻想曲』のソプラノ・サックス、『ギターコンチェルト(通称コパカバーナ)』のギターをそれぞれソロとしたコンチェルト群は、特に色彩感、パッション溢れる旋律、ソロの技巧、聴きやすい形式感などいろんな角度から楽しめるので、お勧めであり、彼の作品の美点がよく表れていると思う。また『赤ちゃんの一族』第1番などのピアノソロのための代表曲も収められている。