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8 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
待ってました!矢作ハードボイルド,
By
レビュー対象商品: THE WRONG GOODBYE―ロング・グッドバイ (角川文庫) (文庫)
’04年、「このミステリーがすごい!」国内編第4位、「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第8位に輝いた、神奈川県警の二村刑事を主人公にした、19年ぶり3作目のハードボイルドである。二村は、世紀末の6月のある日、ビリー・ルウという日系アメリカ軍パイロットと出会った。ビリーと酒を酌み交わした彼は奇妙な友情を感じ始める。しかし、女の他殺死体が入ったトランクを、ビリーによってそうとは気づかぬうちに運ばされたため、彼は捜査一課からはずされ、閑職に左遷されてしまう。その直後、ビリーの操縦する小型飛行機が台湾で墜落したらしいという報せが届く。 一方で二村は、退職した先輩刑事からあるヴァイオリニストの養母の失踪捜査を頼まれる。ビリーの死を信じられない彼は、失踪人の捜索を進めるうちに、ふたつの事件が深いかかわりを持っていることを知るのだった・・・。 一種独特な雰囲気を持つ世紀末の横浜、横須賀を舞台に、街の人々、NHKの記者、怪しげな華僑、軍隊マフィアなどさまざまな人物が登場し、夜の街が描かれるだけでも魅力的だ。また短く切り詰めた文章と、粋で、時にはユーモラスな二村たちの会話のフレーズはクールである。 レイモンド・チャンドラーの『ロング・グッドバイ』の枠組みを借り、そのオマージュに満ちた、男が友と飲み、そして別れるだけの物語だが、登場人物の造形、時代背景、セリフのひとつひとつに矢作ハードボイルドのオリジナルを堪能することができる。
14 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
帰ってまいりました。,
By はめじ (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ (単行本)
矢作俊彦の新作は懐かしの二村永爾が主人公のハードボイルドである。タイトルからして凄い。 レイモンド・チャンドラーの「THE LONG GOODBYE」の向こうをはって「THE WRONG GOODBYE」なのだから。 ストーリーの展開も似ている。明らかなオマージュなのだが、 刑事である二村が意気投合する飲み友達ビリー・ルウはテリー・レノックスを思わせるし、 二人が飲むカクテルもギムレットならぬパパ・ドーブレ。 おっと、パパとはヘミングウェイのことで彼の好きだったダイキリをダブルで、って頼み方なんですけどね。 細部の会話にも小技がビシバシ決まりまくりで、痛快です。 「リンゴォ・キッドの休日」、「真夜中へもう一歩」を読みなおし、 ついでに「長いお別れ」まで再読したくなる、そんな大傑作です。 昔、資生堂の男性用化粧品のCFに小さなランチ(ってもう言いませんか、モーターボートですね)に乗って三船史郎が港に戻ってくるのがあって、 そのコピーが「帰ってまいりました」というだけで異常にカッコ良かったのを思い出してしまいました。
18 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
基地と港の街のキャッチャー,
By カスタマー
レビュー対象商品: THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ (単行本)
もはや一冊の本としては刊行されまい、と半ば諦めていた二村永爾シリーズの新作。それを読める日が現実に来たのだ、いったい何人の矢作俊彦の愛読者が狂喜したことだろう。小説好きにおいては未だ少数派であるにせよ。前作から19年経ち、学生時代は野球で神宮へ行き現在は神奈川県警本部捜一勤務の二村警部補も確実に歳を重ねている。再開発が進み変貌を遂げる横須賀や横浜に意地でも無関心を決めこみ、IT機器を使いこなす旧友に心底驚くあたりがその証左か。 その一方、二村が“フリーの警官”として依頼人の為にプライヴェートな捜査をする事でハードボイルド探偵小説のアイデンティティを獲得している点が本シリーズの肝なのだが、今回は“別組織への出向”という形でこの課題を巧みに処理している。事件の背後に見え隠れする在日米軍の影、これも一作目からの継続事項だ。 そして、題名からも明らかなように、本作品はレイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』へのオマージュとなっている。他の書き手ならいざ知らず、矢作が本腰を入れてこの趣向に取り組んだのは今回が初めてではないだろうか。なにしろ原典がチャン師匠の代表作なのだ、安易に手を出すのは今まで控えていたと邪推する。その甲斐あってか、細部はもちろん異なるにせよ、物語の骨格や雰囲気は『長いお別れ』をきちんと踏まえ折り目正しい本歌取りに仕上げている。テリー・レノックスの矢作的変奏もプラスに働いていると思う。ギムレットからダイキリへの変更など、如何にもこの作家らしい遊びではないか。 30年前、「ニュー・ハードボイルドの旗手」としてデビューを飾った矢作俊彦。近年は『あ・じゃ・ぱん(!)』でハードボイルドパロディの頂点を極め、続く『ららら科學の子』ではミステリそのものからの離陸さえ予感させたが、ことここに至って何と原点回帰を思わせる作品を出してきた。かつてのような比喩の多用からは遠ざかった文体、いささか錯綜しすぎたプロットなど不満な点はあるものの、ひさびさの直球勝負で来たことに変わりはない。ここは作者の気まぐれを素直に享受すべきだろう。“基地と港の街のキャッチャー”は今も依頼人の名誉と自分の信条を守り続けているのだ。
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