ユールの作品をデビュー以来ずっと追いかけてきて、思うのはこのひと純文学にいったほうがいいんじゃないかということです。しかも明治や大正、昭和に至るような、そういう行間にどことなく気品の漂っているころの時代のものに。ご本人も自己紹介の欄で好きな作家は夏目漱石とおっしゃっていますから、この文体の端正さはそこからくるものでしょうか。いかにもヤングアダルトらしい一人称に隠されてはいても、きっとこのひと化けるに違いないぞというそこはかとない期待が抱ける作家です。そのうえ同郷のひいき目でしょうか大阪人らしい、かゆいところに手の届くつっこみが独特のユーモアとともにまんべんなく散りばめられて、作者のひととなりや心意気がそこからうっすらと浮かんでくるようです。
ただ惜しむらくは肝心の謎にあまり歯ごたえがなかったことでしょうか。そのあたりは次の作品に期待したいと思います。