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70 人中、66人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ことばの間に感じられる深い余韻までが素晴らしい、極上の「うたもの」,
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レビュー対象商品: UTAU(2枚組) (CD)
大貫妙子と坂本龍一、1980年代から定期的に共同創作を行っている名コンビである。スタジオ作品としては前回のコラボは1997年の名作「LUCY」に遡るが、坂本氏の温かなプログラミングを駆使したポップス仕様の前作とは対照的で、本作は大貫氏の うた、坂本氏のピアノのみというこの上なくシンプルかつストイックな構成にて、過去の坂本氏の曲に大貫氏が歌詞をつけた作品 を含め11曲収録されている。結果、良い音楽はミニマムな構成でも創造できることを見事に証明した極上の「うたもの」が並んだ。 大貫氏の発声は実に独特で、ことばの一音ずつを吐き出すように丁寧に強調した歌い方をする。また決して早口で言葉をまくし たてることがない故に、各々の言葉が聴き手の耳をすり抜けることなく残り深い余韻を残す。坂本氏のピアノも大貫氏の独特の 息遣いにぴったりと寄り添う様に、実に繊細な和声を奏で彼女の歌唱にさらなる魅力を添えている。 大貫氏は卓越した作詞家でもあり、今回坂本氏が映画や他人名義作品等の為に書き下ろした器楽曲に歌詞を添えているが、原 曲のイメージを壊すことなく、さらに聴き手の想像力を膨らませる素敵な言葉達ばかりだ。特に中盤「Antinomy」や「Flower」での、 欧州の映画のワンシーンを想起させるような物語性溢れる言葉達がとにかく素晴らしい。 他にも童謡「赤とんぼ」に漂う郷愁感と温かさ、「鉄道員」での厳しさと気高さを感じさせる彼らの演奏は、歌の素晴らしさの原点の ようなものを聴き手に想起させてくれる。 スローテンポな曲が多い中、本作の為に書き下ろされた軽やかな「a life」が際立つ。ここで彼女が発する言葉は極めてシンプル。 「そして出会おう 素敵な人と 言葉をつかもう 生きた声を」という一連の言葉は、この厳しい時代の中、人として貫くべきスタンス がこめられている気がして、背中を押されているような気持ちになる。 作品は彼女の名盤「pure accostic」にも収められていた名曲「風の道」でひっそりと幕を下ろす。詞中の「おたがい寄り添う月日を 思えば 語る言葉もないほど短い」は、様々な人達との出会いと別れを繰り返してきた人なら、深い余韻を残さずにはいられない 名フレーズだろう。 2枚目のインスト盤はほぼ1枚目の曲群とリストが被るが、終曲の9分半に及ぶ「Geimori」は、本作の制作過程を坂本氏の断片的 なピアノフレーズと大貫・坂本両氏の会話とで綴った異色作。会話の内容から、各箇所のピアノの音色まで大貫氏が細かく指示し ている処からも、細部にまで拘った作品であることが窺えるだろう。 幅広い年代層の方に聴いていただける、流行や時代を超えた普遍的な価値を持つ極上の「うたもの」集としてお薦めしたい。
40 人中、35人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
絶品,
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レビュー対象商品: UTAU(2枚組) (CD)
最初、このアルバムを買ってきてiTunesに取り込み、仕事をしながら聞こうと思ったのですが、1曲目の途中で手が止まってしまいました。PCからCDを取り出し、居間のステレオで聴かなければいけないと思え、妙にどきどきしながら飲み物だけ用意して、じっと聞き入ることにしました。私が今までに買ったアルバムの中では音のよさも一番だと思います。たいしたオーディオシステムではないですが、それでも明らかに何かが違う。部屋に音が佇む感じと言うか、うちのスピーカーってこんな音出るんだという新たな発見をさせてもらいました。音数が少ないが故に、一つ一つの音があまりにもはっきり聞き取れてしまい、下手をすると酷いことになるのではないかという緊張感が最後まで続き、最後の「語る言葉も無いほど短い」というフレーズがまた別の意味で染みたところで感動と安堵が一緒くたになって1枚目が終わります。2枚目は最初、声の不在に多少の物足りなさを感じました。が、しばらくすると声の不在に対する欲望そのものがピアノの音というか、相手を失った男の哀しさと、それを出すまいとする気丈さのようなものが感じられるようになってきました。アルバム中盤で「Antinomy」は「Lost theme」に、「flower」が「A flower is not a flower」になる(というか原題なだけでしょうけど)というタイトルの対比も切なさを増します。そしてデュエットが叶わなかった「Aqua」で事実上の幕を閉じるのが何か吹っ切れた感じがありますが、その割りに最後の曲(というかコラージュ?)には大貫さんの声も入っており、酷い例えで申し訳ないのですが夢に彼女が出てきたかのような妙な余韻を残してアルバムが終わります。 大貫妙子さんについては今まで少々誤解していたところがあり、声の調子からなんとなくふわっとした歌を歌う人だと思っていましたが、このアルバムを聴いて発音の強さと言うか確かさが凄い人なんだと認識を新たにしました。声を張り上げずに、これだけ強さを出せると言うのは素晴らしい。感動しました。特に「風の道」は大貫妙子版マイウェイでしょうか。一言一言が体全体に染み入る感覚を憶えました。 坂本龍一さんについては長く聴いてきたので特に驚きはありませんでしたが、ピアノがどんどん上手くなってきているんだなと思います。伴奏ではなく、デュエットともいえるボーカルとの絶妙な絡みは官能的という言葉をもう少し超えた言葉を送りたいのですが、言葉が見つかりません。 1枚のほうがどうかは分かりませんが、2枚組のジャケットは開きながら徐々に奥に迫っていく構成で、紙の質と写真の品、牧村さんのライナーノーツから最後の見開きの歌詞カードの上の写真まで素晴らしく、ジャケットを眺めているだけでも結構な満足感があります。これはダウンロードで買うのは損です。アマゾンでこんなことを書くとまずいのかもしれませんが、店頭で手に取り、家に持ち帰る途中に期待を膨らますところから「UTAU」の体験を始めることをお勧めします。 タイトルに付けましたが、まさに絶品でした。
34 人中、28人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「老けた」のかもしれないが、いいアルバムだと思う。,
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レビュー対象商品: UTAU(2枚組) (CD)
私の友人の多くはYMO世代なので、最近の坂本龍一氏の活動についてはかなり批判的な意見を聞くことが多いのですが、その中の友人の一人がポツリと言いました、「なんか老けこんだ音楽やってるよねえ・・・」。確かに本作は坂本のピアノ演奏と大貫の歌だけのシンプルな構成で、友人が「老けこんだ音楽」というのも理解はできるのですが、このアルバムはそういう批判的な意見を目の前ににしても成立するだけの、「音楽としての強さ」を持った稀有なアルバムであると、私は思いました。 ここでの曲は全て坂本龍一の曲ということではなく、中には大貫妙子の曲もありますが、ほとんど坂本の曲なので、彼の音楽的志向がどこに向かっているのかを知ることもできます。 『BTTB』から極めてシンプルな演奏の曲が増えていってから、年々それが深化しているように思えます。 しかも、メロディーがまるで「童謡」のようにシンプルなものに回帰していくさまは、ここ最近顕著な傾向であり、坂本も自分の中の音楽的虚飾を排除して、自分の中から素直に出てくるものと対峙しているのかもしれません。 もう『未来派野郎』や『B2-UNIT』のようなアヴァンギャルドなアルバムを作ることは無いかもしれませんが、純化されていく坂本龍一の音楽がどこまでいくのかに期待したい気持ちです。
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