英米語文化圏では中学生あたりを対象にしていると本だと思われ,難しい単語はほとんど使われていませんが,著者の文体のせいか,米国の大衆小説作家の文章のようにはすらすらと読んでいけませんでした.
はじめに“ベルリンからの一家の引越し”や“主人公Brunoの父親が軍人”という話が出てきて,異様な雰囲気にとまどいますが,それから“鉄条網に囲まれた土地”,“父親の上官らしきFuryという名前の人”,“引越し先のOut-withという変な名前の場所”などが出てきて,これは・・・と思わせます.Brunoは1934年生まれの9歳の少年ですので,舞台は1943年のドイツもしくはドイツ占領地域のどこかということになります.
話は窓から見える鉄条網に囲まれた土地の様子などBruno少年の目を通して,たんたんと進んでいきますが,そういう時代背景に関する基礎知識があると,味わい深いものがあります.そして,たまたま知り合ったこの鉄条網内に住んでいる同い年の少年Shmuelとの鉄条網越しの交流がこの小説の中心となり,これはまた最後の2章のための伏線にもなっています.
日本語訳も出版されているのは,この最後の2章が印象的なためであると思いますし,確かにこの2章がないと映画にはならないでしょう.しかし,Bruno少年の目を通して当時の状況をたんたんと語っていくことによって,人間がどういものになりうるのかを浮かび上がらせるというのが,作者のほんとうに書きたかったことかもしれません.
なお,ご参考までにFuryはFuehrerの,Out-WithはAuschwitzのpunのように,私には思われます.