この本の魅力は何といっても、作者クリス・ヴァン・オールズバーグの精巧にパステルで描かれた絵にある。色調はどれも渋いグレーを基調とした抑えたトーンで、ミステリアスで寡黙な雰囲気は子供より大人向けかもしれない。一枚一枚のカットはフェルメールの室内画にも似た静けさを持ち、映画のスチルのような様々なアングルで構成されている。
この本が今冬、ハリウッドのハイテク技術で長編映画化されると聞いたとき、このシンプルな絵本を引き伸ばして、原作にないキャラクターやプロットを入れたクリスマス娯楽大作になるのかと思い、少し落ち込んだ。この本は限られたイラストと凝縮された言葉で構成され、絵本として完全な形でコンプリートしている。読者は絵と絵、行間と行間の隙間を読んで、いくらでもイメージを膨らませることができるのだ。たぶん、映画には原作のイメージを真似たシーンはあっても、原作のもつスピリットは真似できないだろう。映画を見る予定の方は、見る前にぜひ原作を見て欲しい。英文も難しくないので、洋書売り場でぜひ覗いて見て欲しいと思う。